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ウクライナ検察庁幹部を巡る「カルタゴ作戦」──NABUが汚職組織を摘発、 Kravchenko検事総長は関与を否定

ウクライナの汚職対策機関NABUとSAPは4日、「カルタゴ作戦」を始動し、検察庁(OGP)幹部率いる犯罪組織が振り込め詐欺のコールセンターを庇護し資金を洗浄していたと発表した。5日深夜には検事総長ルスラン・クラフチェンコ氏、第一副検事総長マリア・ヴドヴィチェンコ氏らの執務室が家宅捜索を受けた。クラフチェンコ氏は関与を全面的に否定し、職場にいたと主張。NABUは被疑者の一人を「Kantsler」のコードネームで公表し、拘束されたセルヒー・クロピヴァ氏(OGP国際法務協力局副局長)とされる。6日に高等汚職防止裁判所(VAKS)はクロピヴァ氏を120百万フリヴニャの代替保釈金付きで11月2日まで勾留と決定した。

要点

  • 9月4日、NABUとSAPが「カルタゴ作戦」を発表し、OGP幹部率いる犯罪組織が詐欺コールセンターを庇護していたと公表
  • 5日深夜、NABUがクラフチェンコ検事総長、ヴドヴィチェンコ第一副検事総長らの執務室を家宅捜索(OGPが確認)
  • 組織のリーダーはNABUの資料で「Kantsler」、上層人物は「Shef」(呼び捨てにされる愛称)と記録。NABUはShefを実名公表していないが、徴税庁元長官で父称がAndriyovychという特徴がクラフチェンコ氏と一致
  • OGP国際法務協力局副局長セルヒー・クロピヴァ氏が拘束され、9月6日にVAKSが120百万フリヴニャの代替保釈金付きで11月2日まで勾留を決定
  • 資金洗浄額は少なくとも2,000万フリヴニャ超(不動産・宝飾品)、1,000万フリヴニャ超が親族口座に、Carpathian山麓の高級不動産に少なくとも1,200万フリヴニャ(クロピヴァ被告分の嫌疑額は別途8,990万フリヴニャ)
  • OGPは捜索が令状の範囲を超え、SAP幹部やNABU/SAP職員に関する別件資料にアクセスされたと主張し、法的な評価を要求
  • クラフチェンコ検事総長は公の場で全面的に関与を否定し、職場にいたと発表。クロピヴァ氏の停職・解雇手続き及び関係職員のポリグラフ検査を指示
  • 国家税務局は「疑惑は有罪の証拠ではない」との立場でNABUへの全面協力を表明

なぜ重要か

この事件は、ウクライナの法執行機関の中枢──特に検察庁の幹部──が、振り込め詐欺のコールセンター経済圏を組織的に庇護していたという疑いに踏み込んだものだ。KantslerとShefという暗号名で記録された人物の「Shef」は父称がAndriyovychで、国家税務局の元長官という特徴がクラフチェンコ検事総長と一致するとされる。NABUは氏名を公表していないものの、世論の関心は検事総長の去就に集中している。ウクライナ国内で約2,000件にのぼる詐欺コールセンターがEUや英国の市民を騙して多額の被害を与えているとされる中、汚職対策機関(NABU/SAP)が最上位の検察組織に対して捜査を完遂できるかは、同国のガバナンスと対外的な信頼にとって重大な試金石となる。

何が起きたか

9月4日、ウクライナの汚職対策機関NABU(国家汚職対策局)とSAP(専門汚職対策検察庁)は「カルタゴ作戦」を始動したと発表し、OGP(オフィルス・ゲネラルノホ・プロクラトラ/検事総長府)の幹部率いる犯罪組織が振り込め詐欺のコールセンターを庇護し、その収益を洗浄していたと公表した。組織のリーダーは「Kantsler」のコードネームで呼ばれ、関連人物として「Shef」(元徴税庁長官、父称Andriyovych)、「Muza」(近親者)、「Kamrat」(運転手)、「Flash」(助手)らが記録に登場する。

5日未明、NABUの捜査官らがクラフチェンコ検事総長、ヴドヴィチェンコ第一副検事総長、その他のOGP職員の執務室を家宅捜索した。OGPは捜索の実施自体は確認したが、令状で許された範囲を超え、SAP幹部やNABU/SAP職員に関する別件の捜査資料にもアクセスがあったとして、法的な評価を求めた。

捜査では、2025年中に始まったとされる組織が、詐欺コールセンター2,000件規模の活動から2,000万フリヴニャ超(不動産・宝飾品・貴重動産)を費消し、1,000万フリヴニャ超を親族名義の銀行口座に送金、リーダーがCarpathian山麓の高級アパートに少なくとも1,200万フリヴニャ相当の資産を再登録したとされる。5人の被疑者が特定され、ウクライナ刑法255条(犯罪組織の創設・指導・参加)と209条(犯罪収益の合法化)に問われている。

メディアは拘束された被疑者をOGP国際法務協力局副局長セルヒー・クロピヴァ氏と特定。6日に高等汚職防止裁判所(VAKS)はクロピヴァ氏を11月2日まで勾留、代替保釈金120百万フリヴニャと決定。SAP検察官は審理で、クロピヴァ氏がコージンの自宅でクラフチェンコ氏の邸宅改修を監督し、米国ビザ取得やマドリードでの誕生会を手配したなどと主張した。

クラフチェンコ検事総長は全面的に関与を否定。自身の安全神話の反論として、過去12カ月で1,050件超の捜索、約340件のコールセンター閉鎖、5,000件超のオペレーター端末停止、147件の係属事件、183人超への嫌疑告知、93人の起訴送致を挙げた。OGP報道官やDobrobut医療ネットワークは、匿名の情報源が報じた「クリニック滞在」説を否定した。

ウクライナメディアの見方

ウクライナ国内メディアは、クラフチェンコ氏の公的な否定とOGPによる反論を詳細に報じている。OGPは深夜の捜索が令状範囲を超えたと主張し、令状の根拠が「ダークタイル」「警報装置」「室内センサー」といった私的会話に依拠し、刑事手続き上の「仮定」「可能性」「除外しない」といった曖昧な表現に留まると批判。クラフチェンコ氏の側でウクライナの検察が過去1年に3万件以上の捜索・340件のコールセンター閉鎖実績を強調する一方、「Shef」が検事総長本人を指すとする報道に対しては、ウクライナの主要メディアがオフレコの情報源を多用し、検証が困難な「KantslerはOGP副局長」「コージン300平米の邸宅」「キエフのドブロブート・クリニック滞在」といった未確認情報を大量に流した側面がある。OGPは一貫してNABU/SAPの独立性には敬意を表すと表明しつつ、「脱法収益で改装修理された」とされる会話は「仮定に過ぎない」と牽制。

海外メディアの見方

今回の入力に含まれている出典はウクライナ国内のもののみであり、ウクライナ国外の報道機関や国際機関の直接的な見解は提供されていない。そのため、独立した国際的なフレーミングを提示することはできない。ただし、背景情報として、欧州連合(EU)と英国が、ウクライナの詐欺コールセンターによる自国民被害について、ウクライナ当局に対し再三の閉鎖要請を行っていたとされる(ただし本件の訴追や捜査内容に関する国際的な公式声明は確認されていない)。

報道の食い違い

・クラフチェンコ検事総長の所在:Ukrainska PravdaとZN.UAの情報源は「操作開始から12時間以上所在不明」「キエフのDobrobutクリニック滞在」と報じた。OGP報道官、クラフチェンコ氏本人、Dobrobut医療ネットワークはいずれもこれを否定し、職場にいたと述べた。

・「Shef」の正体:NABUは「Shef」を実名公表していないが、ウクライナ各メディアは(元徴税庁長官、父称Andriyovych)の特徴からKravchenko氏と分析。一方クラフチェンコ氏はコールセンター庇護や不正収益の受領を全面否定。

・捜索の範囲:OGPは令状で許された範囲外の他事件資料(SAP幹部やNABU/SAP職員に関する事項)にアクセスがあったと主張し、法的な評価を要求。NABU/SAP側はこの主張に直接回答していない。

・資金洗浄額:複数の記事で2,000万フリヴニャ超(不動産・宝飾品)、1,000万フリヴニャ超(親族口座)、Carpathianの高級不動産1,200万フリヴニャ超とされるが、一部では合計3,000万フリヴニャ超とする試算や、クロピヴァ被告個別の嫌疑額として8,990万フリヴニャという別数字も登場。

・ゼレンスキー大統領のクラフチェンコ氏解任意向:Ukrainska Pravdaの情報源は「解任準備を進めていたが、Sluga Narodu(与党)会派のダヴィド・アラハミア氏が反対し、様子見となった」と報じた。大統領府もアラハミア氏もこれを公に確認していない。クラフチェンコ氏は大統領と国会からの要請があれば辞任すると述べるにとどまっている。

背景

NABU(国家汚職対策局)とSAP(専門汚職対策検察庁)は、ウクライナの二大汚職対策機関。

2025年12月から2025年6月まで国家税務局長官を務めたルスラン・クラフチェンコ氏が、その後OGP(検事総長府)の検事総長に任命された。NABUの録音記録で「Shef」と呼ばれる人物は「元徴税庁長官で、父称がAndriyovych」と描写されており、これがクラフチェンコ氏と一致する特徴とされる。NABUは被疑者通知を行っていない。

NABUの推定では、ウクライナ国内で約2,000件の詐欺コールセンターが稼働しており、その半数超が「ホワイト」と呼ばれる──つまり法執行機関による庇護を受け、毎月定額の「料金」を支払い、捜索を受けずに営業できる構造とされる。捜査の焦点は、この「単一窓口(single window)」型の月例庇護料が複数の治安・法執行機関にどう分配されていたかにある。