ウクライナ検事総長が辞任を提出、カールハーゲン事件を受け副検事総長も辞任
9月7日夜、ルスラーン・クラフチェンコ検事総長が辞表を提出し、第一副検事総長マーリア・フドヴィチェンコも後に辞任した。背景には、NABUとSAPOが4日に開始した特別捜査「カールハーゲン作戦」があり、検事総長府国際法務協力部の副部長セルヒー・クロピヴァ容疑者らが率いる、組織的なコールセンター「屋根」と資金洗浄を行う犯罪組織が摘発された。クラフチェンコ氏は捜査との直接の関係を否定し、辞任を「政治的決断」と説明した。
要点
- 9月7日夜、ルスラーン・クラフチェンコ検事総長が辞表を提出した
- 第一副検事総長マーリア・フドヴィチェンコ氏も辞表を提出し、8日が最終勤務日となった
- NABU/SAPOは9月4日、検事総長府の幹部らが主導したコールセンターへの「屋根」と資産洗浄を行う犯罪組織を摘発する「カールハーゲン」作戦の開始を発表した
- 9月6日、VAKS(高等反腐敗裁判所)は国際法務協力部副部長セルヒー・クロピヴァ容疑者を拘留し、代替保釈金を1億2000万フリヴニャと設定した
- Kropyva容疑者の交際相手エリーザヴェータ・イヴァフネンコ氏(24歳)を7日に保釈金2000万フリヴニャで拘留、運転手セルヒー・クツィー氏を保釈金300万フリヴニャで拘留した
- 辞任はゼレンスキー大統領および「国民の僕」会派のダヴィド・アラハーミア代表との会合後に行われた
- 9月9日時点でクラフチェンコ氏の罷免案は最高議会(ヴェルホフナ・ラーダ)にまだ届いていない
なぜ重要か
2025年6月に任命されたばかりの検事総長の辞任は、ウクライナの最高法執行機関のポストを空席のままにし、進行中の反腐敗捜査の最中に検事総長府の権威を弱めるものです。「カールハーゲン」事件は、大規模な詐欺コールセンターへの「屋根」を疑われる活動が検事総長府の幹部と直接結びついていることを示しており、制度的健全性への疑問を広げています。NABU/SAPOが検事総長、その副長官、地方政府の長に対して捜査を行ったことは、パートナー国が求めてきた反腐敗機関の独立性が機能しているかの試金石となります。
何が起きたか
ルスラーン・クラフチェンコ検事総長は9月7日夜、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領および「国民の僕」会派のダヴィド・アラハーミア代表との会合後に辞表を提出しました。背景には、NABU(国家反腐敗局)とSAPO(専門反腐敗検察庁)が9月4日に発表した「カールハーゲン」特別捜査があります。同捜査では、検事総長府国際法務協力部(サイバー部門)の副部長セルヒー・クロピヴァ容疑者が主導したとされ、詐欺コールセンターへの「屋根」と犯罪収益の洗浄を行う組織的な犯罪組織が摘発されました。高等反腐敗裁判所(VAKS)は6日にクロピヴァ容疑者を代替保釈金1億2000万フリヴニャで勾留を決定。7日にはクロピヴァ容疑者の交際相手エリーザヴェータ・イヴァフネンコ氏(24歳)を代替保釈金2000万フリヴニャで勾留、運転手セルヒー・クツィー氏も保釈金300万フリヴニャで勾留を決定しました。NABUは5人に対し、ウクライナ刑法第255条(犯罪組織の創設・指導)および第209条(資産の洗浄)に基づき疑いを通知しており、罰則は最長15年の禁固刑となります。NABUとSAPOはクラフチェンコ氏、副検事総長マーリア・フドヴィチェンコ氏、オデーサ州軍事行政管理長官オレフ・キーパーの捜索も実施。フドヴィチェンコ氏の捜索では、NABUのセーメン・クリヴォノス局長やSAPOのオレクサンドル・クリメンコ長官らの監視を示唆する資料や、クロピヴァ容疑者から贈られたとされる高級ロレックス時計が見つかったと報じられました。第一副検事総長のフドヴィチェンコ氏も辞表を提出し、8日が最終勤務日に。9日時点で、クラフチェンコ氏の罷免案は最高議会にまだ届いておらず、法執行委員会は約24時間以内に採決する用意があるとされています。
報道の食い違い
情報源の間には主に3つの見解の相違があります。第一に、クラフチェンコ氏の辞任が自主的なものだったか大統領からの圧力をうけたものかについてで、本人は「意識的な政治的決断」と説明していますが、複数の報道は大統領が辞任を求めたと伝えています。第二に、クラフチェンコ氏が「カールハーゲン」事件で手続き上の地位を持たないとする公式見解と、NABU/SAPOの録音資料や反反腐敗団体が、クロピヴァ容疑者との個人的な関係(コージンにある家の改修費負担、贈り物とされる高級時計)の存在を指摘している点です。第三に、「国民の僕」会派の動きについては、7日時点では指導部と議員がクラフチェンコ氏を最大限擁護する方向だったとの報道がある一方、大統領との会談後に同会派の空気が変わったとする報道もあり、双方が併存しています。
背景
クラフチェンコ氏は2025年6月、36歳の若さで検事総長に就任しました。同年7月には、大統領府がNABUおよびSAPOを検事総長の管轄下に置くことを試みる動きがありましたが、世論と欧州からの圧力で撤回されています。「カールハーゲン」捜査は9月4日に発表され、同捜査では検事総長府の職員が主導したとされた犯罪組織による、大規模な詐欺コールセンターへの「屋根」と資金洗浄が対象となっています。主要被疑者のセルヒー・クロピヴァ容疑者、KYロピヴァ氏の交際相手イヴァフネンコ氏、運転手のクツィー氏は6日から7日にかけてVAKSにより順次勾留が決定されました。NABUとSAPOは5日から7日にかけ、クラフチェンコ氏、フドヴィチェンコ氏、オデーサ州軍事行政管理長官オレフ・キーパー氏に対する捜索を実施。クラフチェンコ氏自身は「カールハーゲン」事件との関与を公式には否定しています。