ウクライナ検事総長が汚職捜査の最中に国外脱出、国会で解任
ウクライナのルスラン・クラフチェンコ検事総長は9月14日、反腐敗機関のトップらに対する嫌疑を発表した直後、公式車両で出国した。ゼレンスキー大統領は同日夜に職務停止を命じ、15日に最高ラーダは317票の憲法多数で解任を決議した。この出来事は、反腐敗機関と大統領府(バンコヴァ)の対立を浮き彫りにした「カルタゴ作戦」のさなかに起きた。
要点
- ルスラン・クラフチェンコ検事総長は9月7日に辞表を提出していた
- 9月14日、同氏はNABU長官セミン・クリヴォノスおよびSAP長官に近い人物に対する嫌疑を発表
- クリヴォノスは嫌疑がねつ造だと否定し、NABUは反腐敗機関への攻撃の継続と非難
- OПГは同日夕方に嫌疑通知は法的に無効だったと発表、ERDRの記録は取り消された
- ゼレンスキー大統領は14日夜にクラフチェンコを職務停止、15日に最高ラーダが317票で解任を承認
- クラフチェンコは「PACE公聴会出席」と称し公用車でリトアニア経由フランスへ出国、経歴上最も若い検事総長
- ゼレンスキー大統領はフメリニツキー州検事局のアントン・コヴァリスキー氏を代行検事総長に任命
- NABUとSAPは15日、クラフチェンコの元副長官で元国家税務庁長官代行のレスィア・カルナウフ氏の捜索を実施
なぜ重要か
現職の検事総長が同国の主要反腐敗機関トップへの嫌疑発表を試みた直後に出国するという異例の事態は、大統領府と反腐敗機関との間の断絶を浮き彫りにした。最高ラーダが憲法多数の317票で24時間以内に解任を決議したことは、ОПГ(検事総長府)とNABU/SAPの関係がもはや修復不可能な水準に達していたことを示している。「カルタゴ作戦」はОПГ内部の腐敗スキームと内部牽制の不全を露呈し、EU加盟条件である国際専門家が参加する競争的任命制度の導入は依然として未履行である。
何が起きたか
9月7日、ルスラン・クラフチェンコ検事総長が辞表を提出。9月14日、同氏はNABU(国家反腐敗局)長官セミン・クリヴォノスおよびSAP(専門反腐敗検察)長官オレクサンドル・クリメンコに近い人物に対する嫌疑を発表し、「カルタゴ作戦」の一環としてNABUが刑事手続きの記録にアクセスしたと主張した。クリヴォノスは嫌疑はねつ造であり正式に通知されていないと反論、NABUはこれを反腐敗機関への攻撃の継続と位置づけた。同日夜、ОПГは嫌疑は法的根拠を欠きERDRの記載も取り消されたとする声明を発表。クラフチェンコは同日、公式車両でリトアニア経由フランスへ出国したとされる(公用旅券により「PACE公聴会出席」と称したが、議題に氏名はなかった)。同日夕刻、ゼレンスキー大統領は同氏を職務停止。15日、最高ラーダは317票で解任を可決、大統領が解任令に署名した。NABUとSAPは15日、クラフチェンコの元部下レスィア・カルナウフ氏の捜索を実施。ゼレンスキー大統領はフメリニツキー州検事局のアントン・コヴァリスキー氏を代行検事総長に任命した。
ウクライナメディアの見方
ウクライナの報道は、政治学者ヴォロディミル・フェセンコと反腐敗活動センター長のダリヤ・カレニュクによる分析を中心に、大統領府(バンコヴァ)とNABU/SAPの対立を軸に展開している。フェセンコはクラフチェンコの出国は大統領府との調整の可能性が高いと評価しつつ、嫌疑発表はクラフチェンコの単独行動でバンコヴァの計画を「壊した」と分析。カレニュクはクラフチェンコがNABU・SAP攻撃のために任命されたと強く疑い、次の検事総長の人物よりEU加盟要件である競争的任命手続きこそが重要だと強調する。報道は「カルタゴ作戦」をОПГ内部の構造的腐敗の暴露と位置づけている。
報道の食い違い
1. クリヴォノスへの嫌疑が実際に通知されたかどうか:クラフチェンコは9月14日に発表、クリヴォノスはねつ造と否定、ОПГは法的に無効だったと表明しERDR記載を取り消した。2. 出国が大統領府と調整されていたかどうか:フェセンコは記者トカーチ氏の「データベース上のフラッグ」報道を根拠に調整説を妥当と評価する一方、嫌疑発表はクラフチェンコの単独行動だったとする。カレニュクはさらに踏み込み、クラフチェンコは国外で嫌疑を発表するために出国を許されたと主張する。3. 出国の正確な日時:一部報道は「9月14日の夜」、他は「9月14日中」と記載する。
背景
「カルタゴ作戦」はNABUとSAPが共同実施したОПГ内部の腐敗スキーム摘発で、副長官付き国際協力部長のセルヒー・クロピヴァ氏らが関与したとされる。クラフチェンコはウクライナ史上最年少の検事総長で、ゼレンスキー政権下で解任後に国外へ出た4人目の検事総長(リアボシャプカ、ベネディクトヴァ、コスティンに続く)となる。ウクライナはEU加盟計画(「カチカ=コス計画」)および2014年からの公約として、国際専門家の決定的投票を含む高等司法評議会による競争的任命手続きの導入を約束していたが、カブミンは所要の法案をまだ提出していない。クラフチェンコの元部下で元国家税務庁長官代行のレスィア・カルナウフ氏は9月14日に解任、15日にNABU/SAPによる捜索を受けた。