米ロのディーゼル燃料合意とウクライナへの圧力——トランプ政権が「エネルギー停戦」を発表、ロシアは数時間後にハリコフを攻撃
10月9日、ドナルド・トランプ米大統領はプーチン露大統領との電話会談で、ロシア産ディーゼル燃料を30万〜300万トン輸入することで合意した。これには自身が署名した制裁の一部解除が含まれる。トランプ氏はウクライナに対し、ロシアの石油精製施設への攻撃停止を求め、米側の情報共有や武器売却を打ち切る可能性で圧力をかけ、ゼレンスキー氏に代わる新大統領を選ぶよう公に呼びかけた。トランプ氏が「エネルギー停戦」が発効したと発表した数時間後、ロシアはハリコフの発電所を攻撃した。
要点
- 10月9日、トランプ氏がプーチン氏と電話会談し、ロシア産ディーゼル燃料を30万〜300万トン米市場および世界市場に供給することで合意。一部制裁の解除を含む
- 10月12日、CNNは米国がウクライナのロシア領内エネルギー施設への深部攻撃停止を求め、情報共有と武器販売の停止の可能性で警告したと報じた
- トランプ氏は「ウクライナは新しい大統領を選ぶ時だ」と公に述べ、ゼレンスキー氏を批判
- トランプ氏は「エネルギー停戦」が成立したと発表。だが数時間以内にロシアがハリコフの発電所を攻撃
- ゼレンスキー氏は合意をプーチン氏への「贈り物」と呼び、ロシアの空爆が停止されない限り精製施設への攻撃も止めないと表明
- ウクライナ側とアナリストはロシアの合意を確認できていないと指摘。トランプ氏側は交渉妨害の責任をウクライナに転嫁しているが、ウクライナは停戦や実質的交渉を拒否してきたのはロシア側だと反論
何が起きたか
10月9日、ドナルド・トランプ米大統領はウラジーミル・プーチン露大統領との電話会談で、ロシア産ディーゼル燃料30万トンから300万トンを米市場と世界市場へ供給することで合意した。この合意にはトランプ氏自身が署名した法律で課されていた制裁の一部解除が含まれ、ロシア産燃料の輸入を可能にする。アナル・エップルバウム氏によれば、トランプ氏は自身が署名した法律の文言と趣旨の両方に違反した。
トランプ氏はウクライナに対し、ロシアの石油精製施設へのドローンおよび長距離攻撃を停止するよう要求した。10月12日、CNNは米政府がウクライナの同盟国および欧州に対し、キエフがロシア領内のエネルギー施設への深部攻撃を止めなければ情報共有および武器供給プログラムの停止もあり得ると警告したと報じた。トランプ氏は公の場でゼレンスキー氏を批判し、「ウクライナは新しい大統領を選ぶ時だ」と述べた。
ゼレンスキー氏はこのディーゼル合意をプーチン独裁者への「贈り物」と呼び、ウクライナが精製施設攻撃を停止する条件としてロシアが空爆を停止することを要求した。「あらゆる緩和措置は相互でなければならない」と述べた。
トランプ氏はウクライナとロシアが「エネルギー停戦」に合意したと発表したが、ウクライナ側はこの合意を確認できていないと述べた。発表から数時間以内にロシアはハリコフの発電所を攻撃し、停戦の即座の違反となったとウクライナ側と評論家は指摘した。
ウクライナメディアの見方
ウクライナ側の報道は、ゼレンスキー氏の対抗姿勢を中心に据え、この合意をプーチン氏への「贈り物」と位置づけ、ロシア側からの対等な譲歩なしの非対称な要求を強調している。ウクライナ専門家のオレグ・シャムシュール氏、オスタプ・ヤリシュ氏、ヴォロディミル・ドゥボヴィク氏 Vadym Denisenko氏などの分析には、欧州の支援、保証中止、状況安定、物語管理といった反危機措置を通じて、米中間選挙前にトランプ氏の姿勢をどう変えるかへの注目が集まっている。ウクライメディアは、合意発表直後のハリコフへの攻撃を、ロシアが「エネルギー停戦」に合意していないという証拠として前面に出している。米中間選挙を前にした米国国内の政治日程が、トランプ氏の一連の動きの背景にあるという見方が繰り返し示されている。
海外メディアの見方
アン・エップルバウム氏(The Atlantic)、ティム・ウィラシー=ウィルシー氏(RUSI)、ナタリー・トッチ氏といった国際的な分析者による論評は、自身が署名した制裁を解除する大統領が、ロシア側の譲歩なしでウクライナに最も効果的な戦術を諦めさせるという戦略的逆転を強調している。また、ウクライナへの情報共有や武器売却の中断、Starlinkアクセスの制限といったトランプ政権のリスクも指摘する。トランプ氏がこれまでの支援撤回によってキエフに対するレバレッジを弱めているという見方も示されている。別の論評では、米外交政策が予測不能になり、独裁者が民主的に選出された指導者よりもワシントンでより良い扱いを受けているという、より広範な懸念が提起されている。一部共和党員を含む米国国内の批判が、政治的脆弱性を示唆しているとの声もある。
報道の食い違い
トランプ氏はロシアとウクライナが「エネルギー停戦」に合意したと主張したが、ウクライナ側と解説者はロシアの合意確認が取れていないと述べ、ハリコフ発電所への即時の攻撃を、ロシア側の非遵守の証拠として指摘した。トランプ氏はウクライナが交渉を妨害していると非難したが、ウクライナ側と分析者らは、ウクライナが停戦を繰り返して提案してきたのに対し、ロシアは停戦にも実質的な交渉にも応じてこなかったと反論した。トランプ氏はロシアのディーゼル合意を燃料価格引き下げに向けた実質的な措置として位置づけたが、アナリストらはロシアの供給量では米国市場を動かすには不十分であり、この合意はむしろ米中間選挙と連動した政治的パフォーマンスであると主張した。
背景
米国のディーゼル燃料価格は、今回の米中間選挙戦の最重要争点の一つとなっている。1ガロン約6.4ドルに達しており、戦争前水準から約73%上昇している。一部には、米国によるイラン戦争とホルムズ海峡その他の物流ルートの混乱が影響している。ウクライナには稼働中の石油精製施設が一つしかなく、ロシアによる攻撃を繰り返し受けているのに対し、ロシアは広範な製油所網を持っている。「エネルギー停戦」とされる合意の対象は両国の製油所への攻撃に限定されており、ウクライナの火力発電所など他のインフラへの攻撃は含まれない。ロシアはウクライナの停戦提案およびその代替提案(選挙を含む)を繰り返し拒否してきた。トランプ氏は第一期政権時代からロシアとの「ビッグディール」を提唱していた。