クレムリンがトランプ氏の発言を引用し「ウクライナに新しい大統領が必要」と主張、ゼレンスキー氏は反発
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、トランプ米大統領が自分に「ウクライナには新しい大統領が必要だ」と伝えたと述べ、ゼレンスキー大統領が戦争終結に必要な「非常に難しい決断」を下す政治的意志を示していないと主張した。ゼレンスキー氏は「大統領はウクライナ人が選ぶ」と反発し、選挙実施はロシアが60日間の停戦に合意することが条件だとした。EUのカルヤス外相は12日、戦争継続中の選挙実施は不可能とし、圧力はロシアに向けられるべきだと述べた。
要点
- ペスコフ氏は「トランプ氏は自分に『新しい大統領が必要だ』と語った」と引用、理由は「終戦に向けた非常に責任ある難しい決断」を下す政治的意思がゼレンスキー氏にないと主張した
- トランプ氏は10月10日、ロシアと合意できる新大統領をウクライナが得るべきだと公に述べた
- ゼレンスキー氏は「大統領はウクライナ人が選ぶ」と反発、60日間の停戦をロシアが受け入れれば選挙を実施すると表明
- EUのカルヤス外相は10月12日、戦争継続中の選挙は不可能とし、圧力はロシアに向けられるべきだと述べた
- トランプ氏は9日、プーチン氏と協議しロシア産ディーゼル燃料の米市場への供給で合意したと発表
- ゼレンスキー氏は、ロシアがウクライナのエネルギーインフラ攻撃を止めれば、ロシア精油所などへの攻撃も停止する用意があると述べた
なぜ重要か
米国大統領によるウクライナ指導部の交代を求める発言をロシア政府が公に増幅・支持したことで、両国が協調してキーウの政治体制に圧力をかけている構図が浮き彫りになった。同時にEUの外交トップが即座に反論し、選挙は戦争終結後かつロシアへの圧力を条件とすべきだという立場を示したことで、ウクライナの主権と民主的手続のあり方を巡る論争が国際舞台に持ち込まれた。
何が起きたか
10月9日、トランプ米大統領はプーチン氏と協議し、ロシア産ディーゼル燃料を米国と世界市場に供給することで合意したと発表した。メディアは、この合意はウクライナのロシア精油所への攻撃停止を求める米側からの6回ほどの要請にゼレンスキー氏が応じなかったことが背景にあったと報じた。10月10日、トランプ氏は「ウクライナにはロシアと合意できる新しい大統領が必要だ」と公に述べ、ゼレンスキー氏を和平努力不足と批判し、米国内のディーゼル価格高騰にも言及した。10月11日、トランプ氏はウクライナとロシアが直ちにエネルギー停戦に合意したと主張したが、ゼレンスキー氏はその直後にロシア軍がハリコフのCHP-5火力発電所とキーウの発電所を攻撃したと報告した。10月12日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、トランプ氏が自分に「新しい大統領が必要だ」と伝えたと語り、ゼレンスキー氏が戦争終結に必要な難しい決断を下す政治的意思を示していないと主張した。これに対しゼレンスキー氏は「大統領はウクライナ人が選ぶ」と反発し、ロシアが60日間の停戦に合意すれば選挙を行うと表明。EUの外交安全保障上級代表カルヤス氏は同日、ルクセンブルクでの外相理事会会合に先立ち、戦争継続中の選挙実施は不可能であり、圧力はロシアに向けられるべきだと述べた。
ウクライナメディアの見方
ウクライナの主要メディアは一様に、ペスコフ氏とトランプ氏の発言をゼレンスキー氏への協調的な圧力と位置づけ、クレムリンの言葉と行動(停戦合意直後のエネルギー施設攻撃)との矛盾を強調した。ゼレンスキー氏の反論——大統領はウクライナ人が選ぶ、選挙は60日停戦が条件——を大きく取り上げ、選挙の前提がロシアの行動にあることを明確にした。カルヤス氏のEUレベルでの反論も大きく報じられ、戦争中の選挙不実施を定めた憲法上の根拠と、圧力はロシアに向けられるべきだという立場が支持された。
海外メディアの見方
ウクライナ国外で取材した英語通信(APA、アゼルバイジャン)は、ペスコフ氏のトランプ氏発言の解説を主軸に据え、トランプ氏が個人的に表明した見解という枠組みで報じた。カルヤス氏やEUの対応、ウクライナ側からのロシアによるエネルギー施設攻撃の報告はほとんど前景化されず、ペスコフ氏のフレーミングに沿った構成となっている。
報道の食い違い
情報源の間で二つの点で食い違いがある。第一に、誰が指導部交代を呼びかけたかの枠組みで、ペスコフ氏がトランプ氏から個人的に「そう考えている」と聞いたと伝える側と、トランプ氏が公にウクライナ新指導部を選んだ上での対話を要求したと報じる側が混在する。第二に、ロシアのウクライナ・エネルギー施設攻撃のタイミングについて、10月11日のトランプ氏のエネルギー停戦声明直後とする報と、別のトランプ氏声明の直後とする報が並存する。標的(ハリコフのCHP-5、キーウの発電所)自体は一致している。
背景
10月9日、トランプ氏はプーチン氏と協議し、ロシア産ディーゼル燃料の米国・世界市場への供給で合意。初期30万トン超、11月に追加50万トン、その後100万トンの規模とされる。10月10日、トランプ氏はウクライナにロシアと合意できる新大統領が必要だと公に発言し、ゼレンスキー氏の和平努力不足を批判、米国のディーゼル価格高騰にも言及した。背景には、ウクライナのロシア精油所攻撃停止を求める米側からの6回ほどの要請にゼレンスキー氏が応じなかったとの報道がある。ゼレンスキー氏はロシアのエネルギーインフラ攻撃への報復として攻撃を行っていると説明し、ロシアが攻撃を止めればウクライナも停止する用意があると表明。10月11日のトランプ氏のエネルギー停戦合意発表直後、ロシアはハリコフのCHP-5とキーウの発電所を攻撃したとゼレンスキー氏は報告。10月12日、カルヤス氏はEU外相理事会に先立ち、ロシアが停戦に従っているとは見られないと述べ、ロシアへの継続的な圧力を求めた。