プーチン氏、ヴァルダイ会議で核兵器使用を示唆し、ウクライナの永世中立とドンバス全域の占領を要求
10月1日、ロシアのプーチン大統領が第23回ヴァルダイ討論クラブで演説し、ウクライナは中立国家であり続けるべきだと主張した。核兵器を「壁に掛かった銃はいずれ必ず発射される」とたとえ、ロシアまたはカリーニングラードへの直接攻撃があれば「あらゆる手段」の使用が不可避なくと警告した。船舶と石油精製所への相互攻撃停止案は「馬鹿げている」と退け、トランプ米大統領の和平提案には「難しい」決定が伴うとしつつ「正しい方向への動き」と評価した。
要点
- プーチン氏は10月1日、ヴァルダイ討論クラブの全体会合で演説した
- 核兵器を「壁に掛かった銃はいずれ必ず発射される」とたとえ、ロシアまたはカリーニングラードへの直接攻撃には「あらゆる手段」で応じると述べた
- ウクライナの永世中立を要求し、1990年のウクライナSSR国家主権宣言に言及した(ただし1991年の独立宣言には中立条項はない)
- 船舶と石油精製所への相互攻撃停止案を「馬鹿げている」と退け、再問されて「いいえ」と回答した
- ドンバス全域の占領とウクライナの中立が和平の条件だとした
- ウクライナの石油精製所攻撃でロシアはGDPの約1%の損失を被ったことを認めた
- NATO諸国への直接攻撃は「あらゆる手段」の使用問題を不可避なくと提起し、欧州委員会が「無責任な核のレトリック」と非難した
なぜ重要か
プーチン氏の演説は、停戦交渉を左右する複数の要素を同時に設定した。核兵器使用を示唆し、ロシアまたはカリーリングラードへの攻撃があれば「あらゆる手段」を使うと警告したことで、欧州委員会が「無責任な核のレトリック」と非難する事態を招いた。ウクライナの中立とドンバス全域の占領を和平の前提条件として再提示したことで、米国主導の交渉(ウィトコフとクシュナーの仲介、アブダビでの協議案)を直接制約する。石油精製所への相互攻撃停止を拒否したことで、ウクライナのロシアエネルギー施設への攻撃は継続・拡大する見通しとなり、世界のエネルギー市場にも影響が及ぶ。
何が起きたか
10月1日、第23回ヴァルダイ討論クラブの全体会合でプーチン大統領が演説した。演説の主要点は次の通り。まず核兵器について「壁に掛かった銃はいずれ必ず発射される」とチェーホフの銃を引き合いに出して語り、ロシアまたはカリーニングラードへの直接攻撃があれば「あらゆる手段」の使用問題が「不可避なくと」生じると警告した。ウクライナについては永世中立国家であるべきだと主張し、1990年7月16日のウクライナSSR国家主権宣言に言及した。ロシアは「常にウクライナが中立国家との前提で進めてきた」としたうえで、ウクライナが憲法にNATO加盟目標を書き込んだことが紛争の原因の一つと主張した。和平については、トランプ米大統領の提案には「難しい」決定が伴うとしつつ「正しい方向への動き」と評価する一方、ドンバス全域の占領とウクライナの中立を条件として要求した。船舶と石油精製所への相互攻撃停止提案は「馬鹿げている」と一蹴し、再問されて「いいえ」と答えた。ウクライナの石油精製所への攻撃でロシアがGDPの約1%の打撃を受けたことも認めた。NATO諸国の兵器供給国に対しては「施設を攻撃するとは言っていないが、脅威として厳しく監視している」と述べた。さらにアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に更大的役割を与える国連改革を呼びかけた。
ウクライナメディアの見方
ウクライナの報道は、プーチン氏の核のレトリックを最重視して報じた。「壁に掛かった銃」の比喩とカリーニングラードに関する「あらゆる手段」の発言を中心に据えた報道が目立つ。石油精製所への相互攻撃停止の拒否も大きく報じられ、プーチン氏が認めたGDP1%の損失と、ウクライナ軍参謀部が発表したロシア石油精製能力の45%以上を停止したという数字を組み合わせた報道が目立った。ウクライナ各紙は、プーチン氏の中立要求を歴史的に誤りだとして批判した。プーチン氏は「独立の基礎となった宣言」と述べて中立条項の存在を示唆したが、実際には1990年の主権宣言を指しており、1991年の独立宣言には中立条項は含まれていない。さらに憲法へのNATO不可逆条項の明記は2014年のクリミア占領とドンバス一部占領の5年後であり、ウクライナは20年以上にわたり中立を実演してきたことも指摘された。専門家のヴィクトル・シュリンチャク氏は、モスクワは長期の国際的不安定と将来の国際秩序における中心としての地位を求めているとの見方を示し、停戦の早期実現を求めていないとの解釈を示した。
海外メディアの見方
入手した唯一の非ウクライナ系出典はアゼルバイジャンの通信社(英語)で、トランプ氏の和平提案にはロシアにとって「難しい」決定が含まれるという見出しの政治的主張を簡潔に伝える内容だった。この国際通信はプーチン氏の「正しい方向への動き」というフレーミングを再現するにとどまり、ロシアが引き続き安全保障の保証を求めているという点も合わせて伝えた。しかし核のレトリック、カリーニングラード発言、石油精製所への相互攻撃停止の拒否については触れず、ウクライナ側の中立条項の歴史的経緯やシュリンチャク氏のような専門家の分析も扱わなかった。
報道の食い違い
出典間で三つの不一致がある。第一に、船舶と石油精製所への相互攻撃停止について、プーチン氏が提案を「馬鹿げている」と言い、再問に「いいえ」と答えたとする出典がある一方で、別の事実では相互停止に「はい」と答えたとする記録がある。第二に、カリーニングラードに関する「あらゆる手段」の発言については、ロシア外務省が事前に核兵器による威嚇を行ったとする出典と、プーチン氏自身がこれを威嚇ではなく威嚇への対応と位置づけたとする出典がある。第三に、プーチン氏が中立条項があると指摘した「宣言」について、プーチン氏は「独立の基礎となった宣言」と表現したが、実際には1990年のウクライナSSR国家主権宣言を指しており、1991年の独立宣言には中立条項は含まれない。
背景
ヴァルダイ討論クラブの第23回セッションは9月28日から10月1日まで開催され、40カ国から120人が参加した。1990年7月16日のウクライナSSR国家主権宣言は、ウクライナの将来の永世中立と軍事ブロック不参加の意思を宣言した。一方1991年8月24日の独立宣言には中立条項はない。ウクライナの憲法へのNATO不可逆条項の明記は2019年2月で、2014年のロシアによるクリミア占領とドンバス一部占領の5年後だった。ウクライナ軍参謀部によると、ウクライナのロシア石油精製所への攻撃で設計能力の45%以上が停止し、9月22日にはサマラのキイブィシェフ石油精製所が攻撃された。ゼレンスキー大統領は9月23日、ロシアの石油精製能力の45%を破壊したと述べた。ドネツク州軍事行政府によれば、大規模侵攻開始以来マリウポリとヴォルノヴァハを除く地域で4,335人が殺害され10,583人が負傷し、8月末時点で分析者の推計ではロシア軍の支配率は79.89%に達した。9月にはロシアがネスレ、スイス、メトロAG、独、オーシャン、仏の資産を暫定管理下に置いた。