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トランプ大統領、「グレアム法」の対ロ制裁・関税を一時停止する大統領令に署名

トランプ米大統領は16日、昨年7月に死去したリンジー上院議員(共和党)が提案した対ロ制裁法案「グレアム法」(Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026)に基づく制裁・制限・関税の適用を一時停止する大統領令に署名した。発動期限だった10月18日の2日前で、自身が署名したばかりの法律の特例条項(セクション115)を用い、停止は米国の国益にかなうとする証明を議会に提出した。停止はトランプ氏と国務長官が解除を決定するまで有効となる。背景には11月3日の中間選挙を前にした米国でのディーゼル燃料価格高騰があるとみられている。

要点

  • 10月16日付の大統領令をトランプ氏が署名し、「グレアム法」の制裁・関税・制限の適用を一時停止
  • グレアム法は9月17日に議会通過、9月19日にトランプ氏が署名し、施行期限は10月18日だった
  • 法律はロシア産石油・ガスの上位5輸入国に対し100%関税、ロシア産エネルギーの米国向け輸入に500%関税を規定
  • 停止の根拠としてトランプ氏はディーゼル価格高騰と11月3日の中間選挙への対応を背景に説明
  • 停止はトランプ氏または上級幹部(国務長官を含む)が解除を決定するまで継続
  • 停止によって中国・インド・トルコなどロシア産エネルギー主要購入国との摩擦を回避
  • 10月9日の財務省OFACによるロシア産ディーゼル取引を認める一般ライセンス第135号、12人の超党派上院議員による10月14日の非難声明など一連の経緯の中で決定

なぜ重要か

トランプ氏は自身が署名したばかりの大型対ロ制裁・関税パッケージを、発動期限の48時間前という極めて近いタイミングで停止した。法律は形式的に関税を施行した上で適用を停止する形で成立しており、トランプ氏はいつでも再活性化できる余地を残している。背景には11月3日の中間選挙を前にしたディーゼル価格高騰対策があるとされ、超党派の上院議員12人と下院議員22人は法律の完全適用を求めていた。トランプ氏の決定は、ウクライナの石油施設攻撃停止を要求した米政権の圧力やゼレンスキー大統領との関係の悪化が続く中で下されており、対ウクライナ支援の縮小に対する欧州側の懸念も強まっている。さらに、中国・インド・トルコなどロシア産エネルギーの主要購入国が同法の域外適用に反対していたことから、こうした国々との摩擦を回避する目的もあったとみられる。

何が起きたか

トランプ米大統領は10月16日付で大統領令に署名し、「グレアム法」(Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026、H.R. 5334)に基づく制裁・制限・関税の適用を停止した。「グレアム法」は、ロシア・ウクライナ情勢を受けた超党派の上院議員リンジー・グレーム氏とリチャード・ブルーメンソール氏によって提案され、2025年4月に上院に登録された。2026年7月11日にグレーム氏が死去した後、7月14日に法案の改訂版が提示されている。法律は9月17日に議会を通過、9月19日にトランプ氏が署名し、施行期限は10月18日とされていた。

法律はロシア産石油・ガスの上位5輸入国に対する100%関税、ロシア産エネルギーの米国向け全輸入に対する500%関税、ロシアの法人・オリガルヒ・銀行・「影の船団」などへの制裁、そして対ウクライナ支援に関与する外国の個人・企業への制裁拡大を規定していた。トランプ氏はセクション115に基づき、停止が国益にかなうとする書面の証明を議会に提出した。命令は形式的に法律上の関税を施行する一方で適用を停止しており、トランプ氏はいつでも関税を再開できる。

停止の背景についてBloombergは、11月3日の中間選挙を前にした米国でのディーゼル価格高騰対策が目的だったと伝えた。また中国・インド・トルコなどロシア産エネルギーの主要購入国との対立回避も理由とされた。これに先立つ10月9日には財務省OFACがロシア産ディーゼル燃料との取引を認める一般ライセンス第135号を発行し、10月14日には超党派の上院議員12人がこのディーゼル合意を「ウクライナの人々への裏切り」と非難して法律の完全適用を求めていた。下院議員22人も両党から同様に完全適用を求めていた。さらに米政権はウクライナのロシア石油施設への攻撃停止を求めており、ウクライナは一時的に応じた後に攻撃を再開していた。

決定を受け、ドン・ベイヤー下院議員(民主党)はトランプ氏がプーチン氏の圧力に屈していると批判し、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)はこの動きを「指導力の恥ずべき失敗」と述べた。

ウクライナメディアの見方

ウクライナ側ではこの決定を、議会で超党派で承認された制裁法をわずか2日前に自ら停止した政治的後退と捉える見方が支配的である。報道は10月18日の施行期限ぎりぎりのタイミング、超党派からの批判、トランプ氏とゼレンスキー大統領の関係悪化、ウクライナへの石油施設攻撃停止圧力などの文脈を一連のものとして強調している。ゼレンスキー大統領は関連するディーゼル合意について「ロシアに有利に作用する明白な弱さ」と公に批判している。

海外メディアの見方

主要な国際的視点を示す資料は提供されていない。

報道の食い違い

出典によって記述の重点が異なる。多くはグレアム法に基づく制裁・制限・関税全般の停止と表現しているが、見出しや要約の一部では、関税(特にセクション112と113)に絞った表現や、ロシアそのものよりもロシア産エネルギー購入国を対象とした措置の停止として枠付けるものも存在する。100%関税の対象範囲についても、一つの記述では「ロシア産石油の最大5購入国」、別の記述では「ロシア産石油・ガスの最大5輸入国および制裁回避を意図的に支援する5か国」としており範囲に幅がある。さらにOFAC一般ライセンス第135号の発行時期について、一つの記述では2025年10月9日、別の記述では2026年10月9日と記しており、年について食い違いがある。

背景

「グレアム法」(H.R. 5334、Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026)は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁法案として、リンジー・グレーム上院議員(共和党)とリチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党)が2025年4月に上院に登録した経緯を持つ。グレーム氏は2026年7月10日にキーウ訪問中の記者会見でホワイトハウスとの合意に達したと発表し、その翌11日に死去。7月14日には改訂・一部緩和版が上程された。

議会は9月17日に法案を最終可決し、トランプ氏は9月19日に署名した。同法はロシア産石油・ガスの最大輸入国5か国に対する100%関税、ロシア産エネルギーの米国向け全輸入に対する500%関税、ロシアの法人・オリガルヒ・銀行・「影の船団」などへの制裁拡大を定めていた。第1次の30日施行期限は10月18日とされた。

署名に先立ち、トランプ氏は法案へのイラン関連条項の追加を求めていた。また10月9日には米財務省外国資産管理室(OFAC)がロシア産ディーゼル燃料との取引を認める一般ライセンス第135号を発行。トランプ氏は同日、ロシアから数千トンのディーゼル燃料が世界市場に供給される旨の合意も発表していた。10月14日には超党派の上院議員12人が、このディーゼル合意を「ウクライナの人々への裏切り」と非難し、ライセンスの撤回と「グレアム法」の完全適用を求める書簡を送っている。下院でも両党の議員22人が同様の要請を行っていた。

10月11日にはトランプ氏が「エネルギー停戦」の開始を主張したが、ゼレンスキー大統領は同発言を「ニュース」と評し、ロシア側が実際に履行するなら応じる用意があると述べていた。Financial Timesは米政権がウクライナの石油精製施設への攻撃停止を求め、武器購入や情報共有の停止をちらつかせたと報じており、ウクライナは一時的に同意した後に攻撃を再開している。ロシア側は同期間中もウクライナのエネルギーインフラへの攻撃を続けていたとされる。「グレアム法」の一部の規定は施行されなかったが、法律によって施行停止の対象となるのは同法に基づく制裁のみであり、他の大統領令で導入された既存の対ロ制裁には影響しないとされている。