米ロ・ディーゼル合意でトランプ氏に進展批判:メローニ伊首相「非常に危険な決定」、米上院議員12人も撤回要求
トランプ米大統領は10月9日、プーチン露大統領とロシア産ディーゼル燃料を米国・世界市場に供給することで合意したと発表。10月11日には両国の石油精製施設への攻撃停止を意味する「エネルギー停戦」も発表した。しかしその直後、現ロシアはウクライナへの攻撃を継続。メローニ伊首相は14日にこの合意を「非常に危険な決定」と批判し、ウクライナへの圧力や停戦の実効性に疑問を呈した。米国内では超党派の上院議員12人が合意の撤回を求める書簡を送っている。
要点
- 10月9日、トランプ氏とプーチン氏がロシア産ディーゼル燃料を米・世界市場に供給する合意に達した
- 10月11日、トランプ氏が両国の石油精製施設への攻撃停止のみを指す「エネルギー停戦」を発表
- 米財務省はロシア産ディーゼル燃料の取引・輸入を許可する一般ライセンス第135号を発出(2027年4月7日まで)
- メローニ伊首相は10月14日、合意を「非常に危険な決定」と批判、燃料価格高騰の主因はイランとの戦争だと指摘
- 超党派の上院議員12人が合意撤回を求める書簡をトランプ氏に送付
- プーチン氏は合意発表直後、国家院選挙中の攻撃に抗議してウクライナとの交渉をしないと確認、ロシアは攻撃を継続
- 11月3日に米中間選挙が予定されている
なぜ重要か
この合意はウクライナと交戦状態にあるロシアのエネルギー売上を容易にし、西側諸国が築いてきた数年にわたる制裁圧力を骨抜きにする。トランプ氏は同時にウクライナの指導部を公然と圧迫しており、米国の対ウクライナの戦時姿勢が大きく転換したことを示す。アナリストらは合意量が米国燃料価格に実質的な影響を与えるには少なすぎるとみており、11月3日の中間選挙に絡む政治的な動機が背景にあると指摘する。米国内では超党派の上院議員が撤回を求めており、政策をめぐる国内政治的な対立が浮上している。キエフは事前協議を受けていないと表明しており、合意発表後もロシアはウクライナへの攻撃を続けているため、停戦の実効性も疑問視されている。
何が起きたか
トランプ米大統領は10月9日、プーチン露大統領との電話協議で、ロシア産ディーゼル燃料を直ちに30万トン超、米・世界市場向けに供給することで合意したと発表。さらに11月に50万トン、短期間で100万トンの追加供給、将来的に300万トンがロシア側精製部門の状況を条件に検討されるとされた。米財務省はロシア産ディーゼルの販売・輸送・陸揚げ・輸入を許可する一般ライセンス第135号を発出し、2027年4月7日まで有効とした。10月11日、トランプ氏は両国の石油精製施設への攻撃停止のみを指す「エネルギー停戦」を発表。しかしクレムリンは合意発表直後、国家院選挙期間中の攻撃への抗議として、プーチン氏が現時点でウクライナと交渉する意向はないとの立場を確認。ロシアは合意発表後もウクライナへの攻撃を継続し、10月14日の夜には39発の弾道ミサイルと128機のドローンでキーウ、ハルキウなどを攻撃した。これに先立ち、トランプ氏はウクライナに新しい指導者を選ぶよう公然と求め、露石油施設への攻撃停止を求めてキエフに圧力をかけていた。
ウクライナメディアの見方
ウクライナの専門家・当局者の反応は極めて批判的だ。ウクライナの主な石油精製所は2022年にロシアの攻撃で機能停止に追い込まれており、ロシア産ディーゼルの解禁はモスクワに新たな収益源を与えると強調される。メローニ伊首相が「成果は疑わしくリスクは明白」と述べた点を引用し、合意がモスクワの戦争継続を助長し、西側の制裁協調を損なうとの懸念が示されている。EU首脳会議の今週の結論文には、トランプ氏とプーチン氏の合意への遺憾表明が含まれる予定と報じられた。ウクライナの専門家は、合意量が米国の燃料価格を下落させる規模には到底及ばないと指摘し、トランプ氏がその影響を過大評価していると批判。ゼレンスキー大統領は合意が月30万〜50万トン規模であるのに対し世界のディーゼル消費量は月1.2億トンに上ると指摘し、ウクライナのエネルギー施設保護と引き換えに米国とのディーゼル供給契約を結ぶ用意があると提案した。
海外メディアの見方
中国系メディアの報道は合意を主に米国内政治の文脈で捉えており、11月3日の中間選挙に合わせた緊急措置であり選挙後に見直される可能性があると論じている。中国の専門家らは、合意量が米価格に影響するには小さすぎること、米国の第三次国に対する対露エネルギー関税を維持しつつロシア・ディーゼルを直接購入するという矛盾を指摘。メローニ伊首相の発言は広く引用され、欧州共通の交渉担当者を任命すべきだとの主張の根拠とされている。イタリアはEU27カ国に「権威ある代表者」を任命し、必要に応じてE3(ドイツ・フランス・英国)に公式な委任を与える可能性を示唆した。EU首脳会議ではロシアのハイブリッド攻撃(ドローン侵入、サイバー攻撃、妨害工作)のエスカレーションも議題となる見込み。
背景
2022年、米議会はロシアの戦争資金化を防ぐためロシア産エネルギー資源の輸入を禁止した。ウクライナには基幹となる石油精製所が一つあるのみで、2022年にロシアの攻撃で機能停止した。世界的な原油価格は年初に1バレル約60ドルまで下落したが、トランプ氏とイスラエルがイランとの戦争を開始した後、1バレル100ドル超に上昇した。トランプ氏とプーチン氏は2025年8月15日にアラスカで会談。9月18日、トランプ氏はロシア産エネルギーを輸入する国に最大100%の二次関税を課す権限を与える法案に署名した。ロシアの石油・ガス税収は年初から第3四半期までの3四半期で前年同期比17%減少しており、ウクライナのロシア石油インフラへの攻撃が影響しているとされる。