公開: · 更新:

元検事総長クラフチェンコ氏夫妻、ウィーン滞在判明 ウクライナ騒動後

ウクライナのルスラン・クラフチェンコ元検事総長とその妻オレクサンドラが、ウィーン中心部の住所を登録していたことが分かった。登録先は住居ではなく法人登記サービス会社の事務所で、ウクライナ当局は未だにクラフチェンコ氏に対する正式な嫌疑を告知していない。

要点

  • 元検事総長ルスラン・クラフチェンコ氏と妻オレクサンドラ氏がウィーンで居住登録
  • 登録先は歴史的中心部Jordangasse 7/12、1010ウィーン
  • 同番地は法人向け登記住所代行会社CS Corporate Services GmbHの事務所であり住居ではない
  • 同じ住所にはDuracell Austria GmbHやKPLER GmbHなど約20社の法人が登録
  • オーストリアは自国民をウクライナに送還せず、 extraditionは極めて困難とされる
  • 9月14日未明にシェヒニ検問所から出国、9月18日に業務出張期限切れ後も帰国せず9月21日に辞表提出
  • 出国前日にNABUのクリヴォノス長官に対する嫌疑通知書を作成し、ゼレンスキー大統領が同日夕方に停職令
  • 9月15日に最高ラーダが317票で辞任を承認、Carthage作戦ではKropyva元OGP当局者が首謀者として拘留

なぜ重要か

クラフチェンコ氏はウクライナの現職検事総長という同国最高位の法執行官であり、その国外脱出と辞任は制度的にも重大な意味を持つ。背景にはNABUとSAPが進めた大規模汚職捜査「カルタゴ作戦」があり、検事総長室の元職員が詐欺コールセンター組織を庇ったとされる事件で、検察トップ自身への嫌疑が浮上した。妻とともにウィーンに居を移した事実は、オーストリアがウクライナへの送還を行わない国であることに加え、役職者の国外脱出と責任追及という問題を改めて突きつけている。

何が起きたか

ルスラン・クラフチェンコ元検事総長と妻オレクサンドラ氏は、ウィーン1区のヨルダーンガッセ7番地12号(1010 Wien)に主たる居住を登録した。同番地は法人登記代行サービスを手掛けるCS Corporate Services GmbHの事務所であり、住居ではない。同所にはDuracell Austria GmbHやKPLER GmbHなど約20社の法人が登録されている。

出国までの経緯は以下の通り。妻オレクサンドラ氏は9月12日にパラーンカ検問所から徒歩でモルドバへ入国し、13日にメルセデスでルシェニ検問所からルーマニアへ渡った。クラフチェンコ氏は9月13日に自ら5日間のパリ出張命令を出し、9月14日午前2時19分にシェヒニ検問所から、旅客輸送業を営む個人事業主ドライバーとともに出国した。同氏は9月14日、NABUのセミエン・クリヴォノス長官に対する嫌疑告知書への署名を行ったと発表した。同日夕刻、ゼレンスキー大統領は大統領令でクラフチェンコ氏の停職を決定し、最高ラーダに辞任承認を求めた。9月15日、最高ラーダは317票で辞任を賛成し、ゼレンスキー氏が同日中に解任令に署名した。出張は9月18日に期限切れとなったが、クラフチェンコ氏は帰国せず、9月21日に検察からの辞表を提出し受理された。

背景には9月4日にNABUとSAPが発表した「カルタゴ作戦」があり、OGP元職員のセルヒー・クロプィヴァ容疑者が詐欺コールセンター組織の首謀者として拘束された。

ウクライナメディアの見方

ウクライナメディアは一斉に汚職・責任追及の観点から記事を組み立てている。報道は出国ルート(出国日時、検問所、車両)を克明に追うとともに、パリ公聴会への出張という公式説明と、実際の参加者リストに氏の名がないという矛盾を対比させている。またヨルダーンガッセの住所が法人登記代行会社の事務所であることに象徴的な意味を見いだし、「実際の居場所を隠す試み」だと論じている。報道では、Anti-Corruption Action Centerが「大統領府の了解なしには出国できなかったはず」と指摘している点にも注目が集まっている。さらに、ウィーンにはすでにチュピツキー元憲法裁長官、シェブチェンコ元国民銀行総裁、ホロドフ元議員など複数のウクライナ元高官が滞在しており、「パターン」と位置付ける見方が示された。

報道の食い違い

1. 9月14日のNABU長官に対する嫌疑告知の有効性: クラフチェンコ氏は自ら署名したと発表し、LIGA.netやウクラインスカ・プラウダなどが報じたが、検事総長室は同日夜に「法的根拠がないため誰も嫌疑を告知されていない」と公式に否定した。 2. 出国の理由: 政界・法執行機関消息筋はカルタゴ作戦との関連や個人的リスクの回避ではないかと示唆しているが、クラフチェンコ氏は9月13~18日のパリPACE公聴会への出張と説明。同公聴会の参加者リストには氏の名前がなかった。出国外脱が露呈した犯罪組織における役割によるものかどうかは確定していない。 3. オーストリアでの登録の事実関係: ウクラインスカ・プラウダンは政界消息筋から得たZMR文書に基づきヨルダーンガッセの住所を報じたが、公式な確認は得ておらず、オーストリア法は実際の居住地の登録を義務づけていると指摘されている。 4. 出国の許可主体: Anti-Corruption Action Centerはゼレンスキー大統領の許可なくして出国はあり得なかったと主張したが、検事総長室は当初「自己手配の出張」と説明しており、大統領府からの公式応答は報じられていない。

背景

オーストリアは自国民をウクライナに送還せず、ウクラインスカ・プラウダは同国を汚職容疑者側の「比較的安全な欧州拠点」と位置づけている。報道時点でウィーンに滞在する他の元ウクライナ高官には、憲法裁判所元長官オレクサンドル・チュピツキー氏、国民銀行元総裁キリーロ・シェブチェンコ氏、元議員アンドリー・ホロドフ氏が含まれる。

背景にあるのがNABUとSAPが9月4日に発表した「カルタゴ作戦」で、詐欺コールセンターから月額2万~2万4000ドルを集めていたグループの摘発である。容疑者には元OGP職員のセルヒー・クロプィヴァ氏が含まれ、彼が犯罪組織の首謀者とされた。クロプィヴァ氏の予防措置選任公判で、反汚職検察は同氏がクラフチェンコ氏のコージン地区の邸宅における未申告のリフォームを調整したと主張。これに対しクラフチェンコ氏は「家族がその家を借りており、申告する予定だ」と反論した。クラフチェンコ氏は税務当局の長を務めた経歴があり、カルタゴ作戦の録音には同じ経歴を持つ「シェフ」(Шеフ、父称Andriyovych)と呼ばれる人物が登場する。