米国がベラルーシからのカリ肥料購入で「大規模」合意を交渉中と発表、ルカシェンコは「余剰なし」と反論
2026年9月21日、トランプ米大統領はベラルーシ産カリ肥料の「大規模」購入合意を交渉中だとSNSのトゥルース・ソーシャルで発表した。トランプ氏は米国が現在カナダに支払っている価格より大幅に安くなると主張し、米国農家にとって朗報だと述べた。一方、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、既に全量が契約済みで米国に供給できる余剰はないと反論した。この発表は米国の中間選挙前夜、カナダとの貿易戦争の最中に飛び出し、EU制裁の枠組みやベラルーシの対ウクライナ支援などとの整合性が問われている。
要点
- 9月21日、トランプ氏がトゥルース・ソーシャルでベラルーシ産カリ肥料の「大規模」購入合意を交渉中と発表
- トランプ氏は価格が対カナダ比で大幅に安くなり、米国農家・牧場主に朗報だと主張
- ルカシェンコ氏は全量既に契約済みで米国向け余剰はないと反論
- 3月にトランプ政権はベラルーシカリ社とBelarusian Potash Companyへの制裁を解除、9月16日には25人の政治犯釈放と引き換えにLakokraskaとBellesbumpromへの制裁も解除
- EU制裁によりリトアニア経由のクラペダ港へのベラルーシ産肥料輸送は不可能で、合意にはEUとバルト諸国の同意が必要
- リトアニアのバドリス外相はEU側に緩和の根拠はないと表明、ムトゥザス外務委員長も米国とベラルーシの合意を通知されておらず、制裁は2月末まで維持される
- 米国は2021年に70万トン超のベラルーシ産カリ肥料を輸入、全体の約90%はカナダ産
なぜ重要か
この合意は、ロシアによるウクライナへの戦争支援を理由に西側制裁の対象となっているルカシェンコ政権との経済関係を一段と深めるものであり、ウクライナ戦争と関連する体制への関与を改めて問うものだ。米国によるベラルーシ産カリ購入は、EU制裁でリトアニア経由のクラペダ港への輸送が依然として制限される中で、ミンスクに新たな収益源を開く可能性がある。さらに、トランプ氏の発表がEU・バルト諸国の制裁政策と整合的でないことは、対ベラルーシ制裁方針に関する米欧間の亀裂を浮き彫りにし、大西洋を越えた協調を複雑にする。3月のBelaruskali・Belarusian Potash Company、続くLakokraska・Bellesbumpromへの制裁解除に続く今回の動きは、トランプ政権によるミンスクとの包括的な関係正常化路線が拡大していることの表れでもある。一方、ルカシェンコ氏が求める供給余剰はないと公言している以上、この合意が商業的に成立するのかどうか自体が疑問視される。
何が起きたか
2026年9月21日、トランプ米大統領は自身のSNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、米国がベラルーシ産カリ肥料を「大規模」規模で購入する合意を交渉中であると発表した。トランプ氏は同国の価格が米国が現在カナダに支払っている価格を大きく下回るはずだとし、米国の農家・牧場主にとって非常に良いニュースだと位置づけた。発表は米国の中間選挙前夜かつ対カナダ貿易戦争が激化する中で行われ、両国は相互の輸入関税を課している。なおトランプ氏はこれまで、対カナダ関税は石油・カリ・重要鉱物を含む最重要天然資源には及んでいないと述べてきた。これに対し、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ベラルーシには米国向けに出せるカリの余剰はなく、既に全量が契約済みだと主張し、トランプ氏の発表内容と矛盾する見方を示した。背景にはトランプ政権による段階的な制裁緩和がある。3月にはベラルーシ最大のカリ生産者であるBelaruskaliおよびBelarusian Potash Companyへの制裁が政治犯釈放と引き換えに解除され、9月16日に米国特使ジョン・コール氏がミンスク訪問中に25人の政治犯釈放を発表すると、米国はLakokraskaとBellesbumpromへの制裁解除にも踏み切った。
海外メディアの見方
国際的な観点から見ると、この合意構想は複数の緊張を同時に走らせる。最も重要なのはベラルーシのカリ産業が同国の外貨獲得の柱であり、対ロシア制裁体制を支える西側の結束と緊張するという点だ。米国はEUおよびバルト諸国に対し、今年5月以降ベラルーシ産カリの制裁緩和と領土通過の許可を求めているが、いずれも拒否されている。トランプ氏が自身の発表の中で「この合意はロシアの利益にはならない」と述べたことは、ウクライナ戦争の文脈において極めて重要であり、ワシントンがモスクワとミンスクの関係を一律の枠組みで扱っていない可能性を示唆している。
報道の食い違い
米ベ双方の発言には明白な食い違いがある。トランプ氏は「大規模」なカリ購入合意が交渉中だと明言し、米国農家にとって価格・供給の両面で利点があると強調した。一方、ルカシェンコ氏は、ベラルーシ側はたとえ希望したとしても米国が必要とする数量を供給する余力はないと公言しており、既に全量が他契約に割り当て済みだと述べた。つまり合意の規模自体について、ワシントンとミンスクの見解が一致していないのが実情である。さらに、サプライ品の概要についても出所が分かれる。3月のBelaruskaliとBelarusian Potash Companyに対する制裁解除と、9月16日以降のLakokraska・Bellesbumpromに対する解除が、それぞれ別個の政治犯釈放合意と結びついているのか、それとも一連の合意の一部なのかについては、報道間で解釈が分かれている。また、トランプ政権によるベラルーシ担当の特使の姓について、各報道が「Coale」と「Cole」の両方で表記しており、人名の特定には揺れがある。
背景
トランプ政権によるベラルーシとの経済的関与は、2025年3月のBelaruskaliおよびBelarusian Potash Companyに対する制裁解除に始まる。これはルカシェンコ政権による政治犯釈放と引き換えに行われた。続く2025年9月16日には、特使ジョン・コール氏がミンスクを訪問し、25人の政治犯釈放を発表。これを受け米国はLakokraskaとBellesbumpromに対する制裁を解除した。カリ産業は制裁導入以前、ベラルーシの重要な外貨獲得源であり、2021年にはベラルーシは米国向けだけで70万トン超のカリ肥料を輸出していたとされる。米国のカリ輸入総量は約1,300万トン、その約90%がカナダ産で、カナダは世界最大のカリ輸出国の一つである。一方EUの制裁はリトアニア領内のカリ輸送を実質的に止めており、ベラルーシ産肥料のクラペダ港経由の搬出を阻んでいる。2025年5月、米国はリトアニア、ポーランド、ウクライナに対し、ベラルーシ産カリの制裁を解除して通過を認めるよう求めていたが、各国とも応じていない。リトアニアのバドリス外相は同国に約1,000人の政治犯がなお拘禁されていると指摘し、リトアニアはベラルーシによるハイブリッド作戦、すなわち移住圧力の武器化、密輸、国境を越えた気球の打ち上げなどに直面していると非難している。2025年9月にはポーランドとリトアニアに近いスワルキ回廊付近で、ベラルーシ軍による機械化・戦車大隊を含む4日間の演習も実施されている。