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フィツォ首相、NATO第5条の義務履行を拒否すると表明─露の侵攻時に同盟防衛参加せず

スロバキアのロベルト・フィツォ首相は18日、訪問先のコシツェではなくプレショフの病院で行った演説で、NATO(北大西洋条約機構)第5条に基づく集団防衛義務を果たすつもりはないと公に宣言した。ロシアによる攻撃を受けた際にも同盟国の防衛には参加しないとしており、首相としてスロバキアを軍事衝突に巻き込まないよう全力を尽くす」と述べた。演説ではロシアを侵略国として一切言及せず、欧州の指導者を「好戦的言辞」で非難した。

要点

  • スロバキアのロベルト・フィツォ首相がNATO第5条に基づく集団防衛義務の履行を拒否する意向を表明した
  • 演説はプレショフの病院で行われ、ロシアを侵略国として一度も名指ししなかった
  • 欧州の指導者の「好戦的言辞」を非難し、NATOが誰から守る必要があるのか理解できないと主張した
  • 「汎欧州規模の軍事衝突の可能性はかつてないほど深刻で緊迫している」と述べた
  • NATO加盟は重要であり、スロバキアは義務を尊重していると述べる一方、首相として軍事衝突回避に尽力する考えを示した
  • 18日にキーウを訪問し、ウクライナのゼレンシキー大統領とコレツキー首相と会談する予定と発表
  • 2023年秋に首相に返り咲いて以降、ウクライナへの軍事支援を停止し、ウクライナのNATO加盟にも反対してきた

なぜ重要か

集団防衛というNATOの根幹原則について、加盟国の首相が事前にその履行を拒否すると公に表明したことは極めて異例であり、ウクライナ側の報道はこれをモスクワ寄りの姿勢の表れとして位置づけている。演説は、ロシアのドローンやハイブリッド攻撃がNATO領域内で相次ぐ中で行われ、こうした情勢との対比によって同盟の結束に疑問を投げかける内容となっている。

何が起きたか

9月18日、スロバキアのロベルト・フィツォ首相はプレショフの病院で行った学生・職員向け演説で、NATO第5条に基づく集団防衛義務を果たす意思がないことを明言した。同条は1か国への武力攻撃を全加盟国への攻撃と見なす原則だが、フィツォ氏は「我々をどこに戦わせるのか、理由も目的も知らされずに数千の兵の準備を命じられると想像できるか」と疑問を呈し、「いかなる第5条のためにも、スロバキアが軍事紛争に巻き込まれることを望まない」と語った。演説の中でロシアを侵略国や欧州への軍事的脅威の源泉として一度も名指しせず、欧州の指導者を「好戦的言辞」と非難して「誰から守る必要があるのか分からない」と主張した。一方で「NATO加盟は重要であり、スロバキアは義務を尊重している」とも述べ、汎欧州の軍事衝突の現実的可能性が「かつてないほど深刻で緊迫している」とも指摘。フィツォ氏はこの数日内にキーウを訪問し、ゼレンシキー大統領およびセレヒイ・コレツキー首相と会談する予定と発表した。

ウクライナメディアの見方

提供された報道はすべてウクライナ側メディアのもので、NATO加盟国の首相が事前に集団防衛を拒否する姿勢を公にしたことを大きく報じた。見出しはフィツォ氏を「露の攻撃時に同盟国を防衛しないと述べた」と伝え、好戦的言辞を否定する同氏の発言をモスクワ寄りの姿勢の表れとして位置づけた。記事は演説を、近年のロシアによるNATO領域内のドローン飛来やハイブリッド事案(ポーランド、デンマーク、リトアニア、ドイツ、スロバキア国内での疑いある事件)と並べて論じ、ロシアによる同盟への圧力が続く中での拒否表明として描いている。また2023年に首相復帰後ただちにウクライナへの軍事支援を停止した経緯、ウクライナのNATO加盟反対、2026年6月のアンカラ・サミット前の追加支援への反対姿勢など、同氏の対ウクライナ・対露姿勢の系譜を背景に置く報道が目立った。演説でロシアを侵略国として一度も言及せず、欧州指導者の「好戦的言辞」を非難した点を、同氏の対露融和姿勢のパターンとみる論調も見られた。

報道の食い違い

ウクライナ側報道の間では、フィツォ氏の発言を「NATO義務そのものの拒否」と読むか「義務を履行するか否かをスロバキアが選択する自由の擁護」と読むかで論調が分かれる。また、予定されるキーウでの会談相手であるウクライナ首相の氏名のローマ字転記(Koretsky、Koreckyi、Koretskyiなど)にばらつきがある。

背景

NATO第5条は1か国への武力攻撃を全加盟国への攻撃とみなす集団防衛原則を定めるが、支援の具体的形態は各加盟国自身が決定する。フィツォ氏は2023年秋に首相に返り咲いた直後にウクライナへの軍事支援を停止し、ロシアの侵攻を正当化すると受け取れる発言を繰り返してきた。2024〜2025年にはウクライナのNATO加盟に反対して拒否権行使をちらつかせ、2026年6月には7月のアンカラ・サミットを控え、ウクライナへの大規模な資金・軍事支援に反対を表明。演説前週には、ロシアのドローンがポーランド国境に近いヤホディン駅で旅客列車を攻撃(9月13日)、別のドローンがヤホディン=ドロフスク検問所近くで落下(9月17日)、デンマーク軍ヘリがロシアフリゲートからシグナルロケットで発射される事案(9月14日)、デンマーク情報当局が同国防産業への破壊工作計画を検知したと発表(9月3日)、リトアニア国内でロシアのドローンが撃墜(9月15日)などのハイブリッド事案が報告されていた。8月にはスロバキア東部のSkyeton UAV工場での放火未遂が阻止され、3人の外国人容疑者が拘束された。なおフィツォ氏以前のスロバキアは、全面侵攻後に13パッケージ・計約6億7100万ユーロの軍事支援と約10機のMiG-29をウクライナに供与していた。