トランプ氏とプーチン氏の電話会談とウクライナへの長距離攻撃・ロシア深部へのドローン攻撃が同時進行
ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領が9月8日に電話会談を行い、トランプ氏はプーチン氏が戦争終結の合意を望んでいると述べた。会談の直後、ウクライナはロシア・ヤマロ・ネネツ自治管区で深さ約2,800kmの地点の施設をドローン攻撃したと発表し、ロシア側は複数のウクライナ都市を攻撃して少なくとも6人が死亡、数十人が負傷した。NYTは欧州当局の話として、ウクライナの今年の予算不足が想定より大きく、追加で270億ドルが必要と報じた。
要点
- 9月8日、トランプ米大統領はプーチン大統領と約1時間の電話会談を行い、プーチン氏は「攻撃的な計画」を欧州に対して持っていないと伝えたとクレムリンが発表した。
- トランプ氏はプーチン氏が合意を望んでいると述べ、プーチン氏とゼレンスキー氏の二者および三者会談の開催に開放的な姿勢を示した。
- ロシア側はプーチン氏の発言について「非常に建設的で率直」だったと説明。プーチン氏の外交補佐官ウシャコフ氏は、バイデン両氏に戦場の「客観的で詳細な分析」を伝えたと述べた。
- NYTは欧州当局の情報として、ゼレンスキー大統領が同盟国に対し、ウクライナが今年度を通すため追加で270億ドル規模の予算不足を抱えていると伝えていると報じた。一部の欧州当局者は、支出の効率性や必要額の妥当性に疑問を呈している。
- 9月10日、ウクライナのドローン攻撃がロシア・ヤマロ・ネネツ自治管区のノヴィ・ウレンゴイ近郊の工業施設で火災を引き起こし、ウクライナ特殊作戦部隊は2022年以降の最深部への到達だと主張した。Fire Point社製ドローンの航続距離について3,300km超という主張はロシア側やモスクワの沈黙と食い違っている。
- ロシアによる同日のウクライナ各地への攻撃で少なくとも6人が死亡、数十人が負傷。キーウで1人死亡・3人負傷(民間人被弾の集合住宅)、ミコーライウで2人死亡・12人負傷、スームィで3人死亡・14人負傷、クラマトルシクで9人負傷と報告された。
- 米国、ウクライナ、欧州の情報機関関係者は、プーチン氏が本気で戦争終結を望んでいるか懐疑的だ。CIA長官ラトクリフ氏の8月末モスクワ訪問やウィトコフ・クシュナー両氏のモスクワ・キーウ訪問など一連の交渉努力にもかかわらず、その見方は変わっていない。
なぜ重要か
トランプ氏がプーチン氏を「合意を望む」と表現したことで、領導レベルの二者会談・三者会談開催の可能性が浮上した。しかし米国・ウクライナ・欧州の情報機関関係者のプーチン氏の意図への懐疑的な見方は変わっておらず、交渉の先行きは見通せない。同時にNYTが報じたウクライナの270億ドル規模の予算不足要求は、同盟国との関係に摩擦を生む恐れがある。並行して、ウクライ長の距離ドローンによるロシア深部(極圏近郊)への到達と、ロシアによる複数都市への致死攻撃が続き、軍事・財政・外交すべての側面で圧力が強まっている。
何が起きたか
9月8日、トランプ米大統領とプーチン露大統領が約1時間にわたり電話会談を実施。トランプ氏はプーチン氏が戦争終結の合意を望んでいると公の場で述べ、プーチン氏とゼレンスキー氏の二者・三者会談に前向きな姿勢を示した。トランプ氏はプーチン氏とゼレンスキー氏の「互いに憎み合っている二つの人物」の問題が障害だと付け加えた。クレムリンはプーチン氏がトランプ氏に「攻撃的な計画」を欧州に対して持っていないと伝えたと発表し、会談を「非常に建設的で率直」だったと評価。プーチン氏の外交補佐官ウシャコフ氏は、プーチン氏が戦場の状況分析や米国が戦闘終結のためにできる具体策をトランプ氏に提示したと述べた。
トランプ氏の特別使節スティーブ・ウィトコフ氏と娘婿のジャレッド・クシュナー氏は、モスクワとキーウを訪問した後帰国。CIA長官ジョン・ラトクリフ氏は8月25日にモスクワを訪問しており、ペンスの情報機関関係者と会談して終戦を促していたとされるが、ロシアのウクライナ戦争が主要議題ではなかったとウクライナのキリロ・ブダーノフ大統領府長官は27日に述べていた。
これらの動きにもかかわらず、米国・ウクライナ・欧州の情報機関関係者はプーチン氏が本気で終戦を望んでいるか懐疑的な姿勢を崩していない。NYTが欧州当局の情報として伝えたところでは、ゼレンスキー大統領が同盟国に対し、今年度の予算赤字が想定より大きく、追加で270億ドルが必要と伝達。一部の欧州当局者は歳出の効率や必要額の妥当性に疑問を呈している。
並行して9月10日、ウクライナのドローンがロシア・ヤマロ・ネネツ自治管区のノヴィ・ウレンゴイ近郊(北極圏のすぐ南、人口約10万人、辺境から国境まで約2,800km)の工業施設を攻撃し火災が発生。ウクライナ特殊作戦部隊はこれが二つのガス凝縮水処理施設を標的とし、2022年開戦以来最深部への到達だと発表した。Fire Point社はドローンが3,300km以上飛行したと主張したが、ロシアのアレクセイ・アレクサンドロフ・パクハン州知事はドローン破片による火災で死傷者はなかったと主張、モスクワは沈黙した。
同日、ロシアはウクライナの複数の地域を攻撃し、少なくとも6人が死亡、数十人が負傷。キーウでは戦闘用ドローンが集合住宅を直撃して女性1人が死亡し子どもを含む住民3人が負傷(クレシチュク市長は当日の負傷者数が16人に達したと発表)、ミコーライウでは港湾施設と食糧倉庫を狙った攻撃で2人死亡・12人負傷、スームィではショッピングセンター駐車場へのドローン攻撃で3人死亡・14人負傷、クラマトルシクでは9発の滑空爆弾によると見られる砲撃で9人が負傷した。
海外メディアの見方
カタールのアルジャジーラ・アラビック版は、この物語を三つの絡み合う要素で構成している:トランプ氏のプーチン氏との政治的連携姿勢、ウクライナによるロシア深部へのドローン攻撃、そして続くロシアのウクライナ都市への攻撃。三つを等比重で配置している点が特徴で、その中でウクライナが同盟国に提示した270億ドル規模の予算不足要求や、欧州当局者によるプーチン氏の意図への懐疑を、編集上の重み付けなしに埋め込んでおり、各要素を並列的に提示している。
報道の食い違い
アルジャジーラ・アラビック版によれば二つの点で出典の間に食い違いがある。一つは、ウクライナのドローン攻撃について:Fire Point社がドローンが3,300km以上飛行して標的に命中したと主張する一方、ロシア・ヤマロ・ネネツ自治管区のドミトリー・アレクセイ・アレクサンドロフ知事は損傷はドローン破片による火災のみで死傷者はなかったと述べ、モスクワはコメントを出していない。またウクライナの国防情報総局は二つのガス凝縮水処理施設を標的としたとしたが、ロシアの知事はノヴィ・ウレンゴイ地区と特定している。もう一つはトランプ氏がプーチン氏は合意を望んでいると述べるのに対し、米国・ウクライナ・欧州の情報機関関係者はプーチン氏が本気で終戦を望んでいるか懐疑的だとしている点である。
背景
モスクワ、ワシントン、キーウはこれまで三者交渉を重ねており、直近は2月にスイス・ジュネーブで行われた。CIA長官ラトクリフ氏は8月末にモスクワを訪問、ロシアの情報機関関係者と終戦を働きかける会談を行った。ウクライ長は月頭、ロシアの航空域をドローンで危険にすると警告し、ロシア深部への長距離攻撃を強化していた。