公開: · 更新:

ウィトコフ・クシュナー両氏、モスクワとキーウを訪問 ゼレンスキー氏と3ラウンドの協議

トランプ米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏とジェラード・クシュナー氏は9月5日にモスクワでプーチン大統領と会談し、6日にキーウへ移動してゼレンスキー大統領と協議した。キーウでの協議は3ラウンドで行われ、独仏英(E3)の国家安保補佐官が2ラウンド目から同席した。両氏は帰国後に「実質的な進展があった」と表明し、ゼレンスキー氏は追加訪問と米大統領との9月20日台の会談を期待していると述べた。一方、ロシア側は態度を硬化させており、停戦への道筋は見えていない。

要点

  • 9月5日: ウィトコフ氏とクシュナー氏はモスクワでプーチン大統領と3時間超会談
  • 9月6日: 同氏はキーウ入りしゼレンスキー氏と協議 — ウクライナ訪問は初めて
  • キーウ協議は3ラウンドで、独仏英(E3)の国家安保補佐官が2ラウンド目から参加
  • 協議でウィトコフ氏はモスクワでは機能しなかった「新たなアイデア」を提示したと発言
  • ゼレンスキー氏は次回訪問時に自分の大統領機でキーウ入りする案を提案、9月20日台にトランプ氏と会談する意向を表明
  • ブリティッシュスカイなどの情報源はロシアがドネツク州全土掌握を年内に達成できるとはみていないと指摘
  • ロシアはキーウ訪問前夜にボリスポリとジュリャニ両空港の滑走路を攻撃 — 米国側は列車でキーウ入り

なぜ重要か

これまでモスクワ中心で行われてきた和平交渉の枠組みに、ウクライナが初めて直接参加する場が与えられた意義は大きい。加えて独仏英(E3)の国家安保補佐官が協議に加わり、米露二者協議から欧米ブロックでの協議へと枠組みが移った。他方でウィトコフ氏は「実質的な進展」を主張したが、プーチン側に譲歩の兆候はなく、停戦への道筋は見えない。双方が冬の継続戦闘を前提としつつも、ゼレンスキー氏が「価値あるアイデア」と評した具体案は非公開のまま残されている。

何が起きたか

トランプ米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏とジェラード・クシュナー氏は9月5日にモスクワでプーチン大統領と3時間を超える会談を行った。翌6日にはキーウへ移動しゼレンスキー大統領と会談した。キーウの協議は3ラウンドで行われ、独仏英(E3)の国家安保補佐官が2ラウンド目から合流した。議題は和平の枠組み、安全保障保証、ウクライナへの防空システム供与、冬前の支援パッケージなどであった。ウィトコフ氏はモスクワで出なかった「新たなアイデア」をキーウに伝えたと述べ、協議は「実質的」で三者協議の段取りも整ったと表明した。ゼレンスキー氏はキーウ訪問が自身の交渉上の立場を強化する証拠だとし、トランプ氏との9月20日台の会談と、特使団の再訪を期待していると述べた。次回訪問時には自分の大統領機でキーウ入りする案も提示した。一方モスクワでは米国代表団を長時間待たせたと報じられ、ロシア側は態度を硬化させた。

ウクライナメディアの見方

ウクライナ側報道はゼレンスキー氏の語り口を軸に、(1)訪問がウクライナ側の交渉力を強化した証拠である、(2)欧州パートナーが正式にテーブルに着いた、(3)米国の新アイデアが存在する(内容は非公開)、という点を強調している。また訪問前のロシアによるボリスポリ・ジュリャニ両空港滑走路への攻撃や、米国側が列車を選択した事実を大きく取り上げ、ロシアが外交ロジスティクスを妨害し、ウクライナ側が準備面でプロフェッショナルであったという構図を打ち出した。軍・情報部門のパリサ、ブダノフ、ドラパーティ、イヴァシェンコ、クリヴォノジコ各氏によるブリーフィングを通じ、ロシアのドンバス掌握計画が焦点として前面に出ており、ロシアの領土要求は事実上の降伏条件であるとの位置付けが強調されている。

海外メディアの見方

カタール・アルジャジーラ英語版の1本のみが非ウクライナ系記事で、三者協議という米国主導の枠組みとして報じている。ウクライナ報道で引用される英語圏報道(Bloomberg、Reuters、Axios、BBC Ukraine、Kyiv Independent、ISW)はモスクワ側を一貫して否定的に描き、米国代表団を待たせた、プーチン側近キリル・ドミトリエフとの長い昼食があった、プーチン側に軟化の兆候がない、9月18-20日のロシア下院選と11月3日の米国中間選挙をにらんだ政治的演出だった、と論じている。

報道の食い違い

進展があったかどうかで見解が分かれる。ウィトコフ氏はXで「実質的な進展があった」と表明し、ゼレンスキー氏も一部のアイデアを「価値がある」と評価した。一方Bloombergはクレムリン筋の話として、ロシア側会合への期待は「極めて低い」と事前段階で報じており、ウクライナ側情報源も欧州・米当局者の見通しとして戦争が来年以降も続くと伝えたとの見方を示している。またシャトル外交の順序についても、ウクライナ側のあるアナリストはモスクワ先行・キーウ後という順序がモスクワ側に利したと批判したが、ゼレンスキー氏はキーウ訪問を交渉上の立場強化の証拠と位置付けた。

背景

ロシアは2022年2月24日からウクライナへの全面侵攻を継続している。モスクワはNATO加盟断念を和平条件とし、ウクライナは内政干渉だとして拒否している。ウクライナは失われた領土の割譲も降伏条項だとして拒否してきた。昨年11月に持ち込まれた米側28項目案は三者形式で作業されたが領土問題で合意に至っていない。ロシア政治指導部は2026年末までのドンバス掌握を目指しているが、ロシア軍は3月31日2027年への延期を要請しており、これまでに15回の延期があったとされる。米中間選挙は11月3日、ロシア下院選は9月18-20日に予定されており、米ロ双方の政治日程が交渉のタイミングを規定している。