公開: · 更新:

ウクライナ大統領府長官ブダノフ氏、ロシア軍参謀本部GRU長官やプリゴジン氏と秘密交渉を重ねていたと明かす

ウクライナのゼレンスキー大統領府長官キリル・ブダノフ氏が4日付の米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、ロシア軍参謀本部GRUのイーゴリ・コスチュコフ長官や故ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏と長年にわたり秘密チャネルで接触を続けてきたと明かした。ブダノフ氏はドンバス地方に関するいかなる妥協にも反対する考えを大統領に助言しており、停戦条件が成立する可能性は2027年春以前には低いとの見通しも示した。

要点

  • ブダノフ氏は2026年1月初めにゼレンスキー大統領府長官に就任し、ロシアとの交渉でウクライナ代表団を率いている
  • ニューヨーク・タイムズ4日付のインタビューで、ロシア軍GRUのコスチュコフ長官やワグネル創設者プリゴジン氏と秘密接触を重ねてきたと述べた
  • コスチュコフ氏との最初の交渉は2022年、トルコの仲介で黒海穀物回廊の再開について行われ、捕虜問題などで成果を上げた
  • 2024年のヴォフチャンスクにおけるGRU拠点強襲後やプリゴジン氏の叛乱・死亡(2023年)後も対話チャネルは維持された
  • ブダノフ氏はゼレンスキー大統領に対し、ロシアが戦場で制圧できなかった領土を正式に認めるようなドンバスでの妥協には同意しないよう助言した
  • 2026年1月23〜24日と2月4〜5日にアブダビで行われた三者協議では20項目の和平案がザポリッジャ原発とドンバス管理の二点に絞られていた
  • ブダノフ氏は交渉が9月に再開される可能性がある一方、停戦は早くても2027年春になるとの見方を示した

なぜ重要か

ブダノフ氏は2026年1月以来ロシアとの交渉でウクライナ代表団を率いており、その人物が公の場で秘密チャネルの全体像を明かしたことの意義は大きい。長年にわたり軍事的対立の最中でもGRUやワグネルとの連絡網が維持されてきた事実は、ウクライナ側の交渉戦略を理解するうえで重要な手掛かりとなる。さらに、ブダノフ氏がゼレンスキー大統領に直接助言した立場から、ドンバスやザポリッジャ原発という最も困難な論点でロシアへの妥協を拒否する方針が示されたことで、和平交渉の政治的限界線がより明確になった。

何が起きたか

ゼレンスキー大統領府長官キリル・ブダノフ氏は2026年9月4日付の米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューに応じ、ロシア軍参謀本部GRU長官イーゴリ・コスチュコフ海軍大将、およびワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏と長年にわたり秘密チャネルで接触してきたと明かした。コスチュコフ氏との初の交渉は2022年にトルコの仲介で黒海の穀物輸送路再開をめぐって行われ、捕虜交換を含む具体的な成果を上げてきた。2024年にヴォフチャンスクのセメント工場でGRU拠点を強襲しコスチュコフ氏の部隊に大打撃を与えた後にも対話は途切れず、プリゴジン氏とも2023年のワグネル叛乱とプリゴジン氏の死亡(同年の航空機爆発)まで交渉を続けていたという。インタビューでブダノフ氏は、ゼレンスキー大統領に対し、ロシアが戦場で掌握できなかった領土を正式に認める形のドンバス妥協には同意しないよう助言したと語った。

ウクライナメディアの見方

ウクライナ側報道は今回のインタビューを、ウクライナの交渉方針を裏付ける材料としており、特にブダノフ氏が「ロシアが武力奪取できなかった領土を譲るな」という立場を大統領に直接助言している点を強調している。コスチュコフ氏との交渉が捕虜問題などで成果を上げてきた事実は、裏チャネルが実務的に機能してきたという実績として紹介されている。

海外メディアの見方

今回の報道は4日付のニューヨーク・タイムズ独占インタビューに依拠しており、ウクライナ側報道もこれを引用する形で伝えた。入手した情報源にはこれとは別に国際的な発信元は含まれていないため、米メディア側との枠組み比較は困難である。

背景

ブダノフ氏は2026年1月初めにゼレンスキー大統領府長官に就任した。同年1月23〜24日と2月4〜5日にはアブダビでウクライナ・ロシア・米国の三者協議が行われ、当初の20項目案はザポリッジャ原発の管理とウクライナが引き続き掌握するドンバス地域の帰趣の2点に絞られた。同年1月末以降、ロシアがモスクワでの協議継続とプーチン大統領との会談を提案しウクライナ代表が拘束される危険が生じたことなどから、交渉プロセスは一時停滞した。8月28日のナターリヤ・モセイチュク氏とのインタビューでブダノフ氏は、ロシアが戦争終結を求めていないため今冬中の終結は見込めないとしつつ、交渉が近く再開されるとの見通しを示していた。