ウクライナの反腐敗機関、ステファニシナ前副首相兼法務大臣の捜査終結
ウクライナの反腐敗捜査機関であるNABUとSAPOは、ヴィチェ首相経験者で元法務大臣のオーリャ・ステファニシナ氏をめぐる事件の公判前捜査を終了した。同氏は1,390万グリヴナ以上の不正蓄財と虚偽の資産申告の容疑で訴追されており、事件記録は弁護側に開示された。今後は裁判手続きが始まる見通し。
要点
- NABUとSAPOがオーリャ・ステファニシナ氏に対する公判前捜査を終了した
- 容疑は1,390万グリヴナ超の不正蓄財と虚偽申告で、刑法368条の5および366条の2第2部に該当
- 『ファイナ・タウン』住居区の2物件(計約1,100万グリヴナ相当)は親しい友人の名義で登記されていた
- 高等反腐敗裁判所は6百万グリヴナの保釈金を選定、保釈金は元勤務先の法律事務所『イリヤーシェフ・アンド・パートナーズ』により納付された
- 2024年初頭から2025年半ばまでの公式収入は約370万グリヴナ、銀行口座からの支出だけで約420万グリヴナに達した
- 捜査はステファニシナ氏に関する2件目の刑事手続きで、1件目はエーレナ・ルカシュ氏時代の法務省関連の汚職疑惑に遡る
なぜ重要か
副首相、法務大臣、米国大使を歴任した元高官が対象となっており、ウクライナの反腐敗制度の試金石となる事件である。嫌疑額(1,390万グリヴナ超)と、友人や親族名義で登記されていたと疑われる資産構成(計約1,100万グリヴナ相当のキーウのマンション2件、未申告のメルセデス・ベンツ)は、訴訟が代理人や親族を通じた資産隠蔽という構図で組み立てられていることを示す。さらに、保釈金が被疑者本人ではなく元勤務先の法律事務所『イリヤーシェフ・アンド・パートナーズ』によって納付された点は異例として注目される。
何が起きたか
ウクライナの反腐敗捜査機関NABUとSAPOは、元副首相兼法務大臣のオーリャ・ステファニシナ氏に関する捜査を完了した。嫌疑は1,390万グリヴナ超の不正蓄財と虚偽の資産申告で、刑法368条の5(不正蓄財)および366条の2第2部(虚偽申告)に該当する。起訴状が送付される前に、事件記録は弁護側の精読のため公開された。
事件の焦点は、キーウの『ファイナ・タウン』住居区に友人の名義で登記されていた2件のマンション(計約1,100万グリヴナ相当)、母親名義の『リヴィヴスカ・プローシャ』ビジネスクラスのマンション、部下名義のメルセデス・ベンツGLC 220 dで、いずれも申告されていなかったとされる。2024年初頭から2025年半ばまでの公式収入は約370万グリヴナに対し、銀行口座からの支出だけでも約420万グリヴナに上った。高等反腐敗裁判所は6百万グリヴナの保釈金を課し、保釈金は元勤務先の法律事務所『イリヤーシェフ・アンド・パートナーズ』により納付された。
さらに、ステファニシナ氏はキーウ郊外で約55万ドル相当の住宅の購入を交渉していたが、250万ドル相当を現金、残りを知人名義の同マンション2件の譲渡で支払う計画だった。海外での外交就任に伴い、この取引からは手を引いたとされる。
なお、抗腐敗機関は公式発表で被疑者の氏名を明かしていないが、事件の情況からステファニシナ氏本人と報道で特定されている。
報道の食い違い
弁護側は事実面・法律面の双方から嫌疑を争っている。『ファイナ・タウン』のマンション2件は親しい友人が自身の合法的な収入で購入したものであり、ステファニシナ氏の両親は自身の財産として400万グリヴナ超を独自に蓄積したと主張する。また、キーウ郊外で住宅を見たことは購入の証拠にはならず、当該マンションやメルセデスは法定の使用期間に満たないため申告義務はなかったと反論している。検察側はこれに対し、これらの資産は被疑者の未申告の富であり、マンションは友人を通じた名義人取引で購入されたと位置づけている。
加えて、ファイル内の記述には整合性のない箇所がある。一つは『ファイナ・タウン』のマンション1件と700万グリヴナ相当の現金の取得時期を2024〜2025年とする記述、もう一つは嫌疑通知の時期を2026年8月とする記述である。
背景
NABUとSAPOはウクライナの専門の反腐敗捜査・訴追機関であり、かかる事件は高等反腐敗裁判所が管轄する。ステファニシナ氏は嫌疑通知の発表に先立ち、米国駐箚ウクライナ大使としての任期を終えていた。
ステファニシナ氏は2020年から2025年まで欧州・欧州大西洋統合担当副首相を、2024年から2025年まで法務大臣を務めた。2026年8月3日にウォロディミル・ゼレンスキー大統領により駐米大使を解任され、同月5日にNABUとSAPOから嫌疑が通知された。8月6日に高等反腐敗裁判所が保釈金6百万グリヴナの保全処分を決定し、8月13日に保釈金は元勤務先の法律事務所『イリヤーシェフ・アンド・パートナーズ』により納付された。
ファイル内の記述間には時期の不整合が見られ、『ファイナ・タウン』のマンション1件と700万グリヴナ相当の現金の取得時期を2024〜2025年とする記述と、嫌疑通知の時期を2026年8月とする記述の間で整合性が取れていない可能性がある。これは本件に関する2件目の刑事手続きであり、最初のものはエーレナ・ルカシュ氏時代の法務省における10年以上前の汚職疑惑に関するものである。