ノルドストリーム爆破事件:ウクライナ人容疑者、クロアチアに政治亡命を申請
ノルドストリーム・パイプライン爆破事件に関与した疑いでドイツが指名手配しているウクライナ人のヴラジーミル・ジュラヴリョフ容疑者が、ドイツでの公正な裁判を受けられないとの理由から、クロアチアに政治亡命を申請した。弁護人によると、亡命申請は自動的に extradition(身柄引き渡し)を停止させるものではない。クロアチアのプーラ地方裁判所はすでにドイツへの身柄引き渡しを認めており、弁護側はこれを控訴している。
要点
- ジュラヴリョフ容疑者(ウクライナの46歳のプロのダイバー)は、クロアチアで9月19日に欧州逮捕状に基づき身柄を拘束された
- 弁護人のミコラ・カーテリンチュク氏は9月29日、SuspilneとBabelに対し、ジュラヴリョフ容疑者がクロアチアに政治亡命を申請したと述べた
- 申立ての理由は「ドイツでは公正な裁判を受けられない」というもの
- 弁護人は「亡命申請は自動的に身柄引き渡し手続きを停止させるものではない」と説明
- クロアチアのプーラ地方裁判所はドイツへの身柄引き渡しを認める判決を出しており、弁護側はこれを「偏った」「政治的な」判決と評し、控訴している
- 容疑者は拘束当時、ノルドストリーム爆破事件を題材にしたハリウッド映画「Snake Island(オストリーフ・ズミイヌィ)」の撮影現場でコンサルタントとして働いていた
- 2025年10月、ワルシャワの裁判所はドイツへの身柄引き渡し請求を拒否し、ジュラヴリョフの解放を命じていた
なぜ重要か
ノルドストリーム爆破事件は2022年9月以来、ヨーロッパのエネルギー安全保障と地政学における最重要の未解決問題の一つである。ウクライナ人容疑者に対する亡命申請という新たな展開は、ドイツの裁判手続きへの道を複雑化させる。さらに重要なのは、ポーランドがすでに身柄引き渡しを拒否しており、ウクライナ政府が国家関与を公式に否定している中で、この事件が持つ政治的敏感さを示している点である。拘束当時、ハリウッド映画のコンサルタントとして働いていたという特異な事情は、この事件に対する世界の関心と報道熱をさらに高めている。
何が起きたか
ドイツの検察がノルドストリーム1号および2号線の爆破への関与の疑いで指名手配していたウクライナ人、ヴラージミル・ジュラヴリョフは、クロアチアに政治亡命を申請した。代理人のミコラ・カチェリンチュク弁護士が9月29日、SuspilneおよびBabelの取材に対し、この申請を明らかにし、申立ての理由は、ドイツでは公正な裁判を受けられないというジュラヴリョフの主張にあると述べた。カチェリンチュク弁護士は亡命申請が自動的に身柄引き渡し手続きを停止するわけではないことを強調した。クロアチアのプーラ地方裁判所はすでにドイツへの身柄引き渡しを認める判決を出しており、弁護側はこれを控訴すると表明。「偏っている」「政治的だ」と評した。ジュラヴリョフは8月19日、ドイツが発付した欧州逮捕状に基づき、爆破事件を題材にしたハリウッド映画「Snake Island(オストリフ・ズミイヌィ)」の撮影現場でコンサルタントとして働いていた最中にプーラで身柄を拘束された。46歳のプロ・ダイバーでドイツの指導者である。ドイツ検察は、ノルドストリーム・パイプラインに爆発物を設置した潜水工作員の一人だったと主張している。本人は容疑を否認し、爆破時にはウクライナにいたと述べている。別途、ドイツの検察が主犯として位置づける別のウクライナ人セルヒー・クズネツォフは2025年8月にイタリアで身柄を拘束され、同年11月にドイツに身柄を引き渡された。彼は2026年7月1日に正式起訴されており、裁判は10月末にハンブルクで始まる予定である。
ウクライナメディアの見方
ウクライナ語メディアは、ジュラヴリョフ容疑者の市民権、ウクライナ人弁護人ミコラ・カチェリンチュクの存在、そしてドイツでは公正な裁判を受けられないという亡命申請の根拠を大きく取り上げた。報道は、クロアチア地裁の身柄引き渡し判決に対する弁護団の「偏った」「政治的だ」との評価を強調し、身柄引き渡しを巡る紛争を政治的に動機づけられたプロセスとして描いている。また、ウクライナ政府の公式立場として、サボタージュへの国家関与を裏付ける証拠は見つからなかったとする検事総長室の声明も背景に含め、2025年にポーランドが身柄引き渡しを拒否した経緯も詳しく報じている。ジュラヴリョフ容疑者本人が、爆破時にはウクライナにいたと主張して関与を否認している点も、ウクライナ側の報道で一貫して強調されている。
報道の食い違い
報道機関は、ドイツが起訴または指名手配したウクライナ人容疑者の総数で見解が分かれている。複数の筋は6人と伝えるが、5人とする報道や、全体で7人が特定されたとする出典もある。プーラ地裁の身柄引き渡し判決の日付についても、2026年9月18日とする情報源がある一方、別の情報源は正確な日付を明示せず「先ごろ」とのみ報じている。さらに、クズネツォフのハンブルクでの裁判開始日についても、「10月末」とする報道と「およそ10月26日」と具体化する報道の双方が存在する。
背景
2022年9月26日の夜、ノルドストリーム1号線と2号線の4本のストリームのうち3本が、デンマーク領ボルンホルム島付近のバルト海で爆発により破壊され、4本中1本のみが無事で残った。2024年2月、捜査開始の根拠がないとしてデンマークが捜査を終了し、スウェーデンも同様の決定を行った。2025年8月26日/27日、ドイツの調査機関が爆破への関与の疑いで6人のウクライナ市民に対する逮捕状を発付したと、独紙Die Zeit、ARD、Süddeutsche Zeitungが報じた。ドイツの検察はセルヒー・クズネツォフを、ウクライナ国家機関の指示を受けて行動したとされるグループの指揮官として主要容疑者と位置づけている。クズネツォフは2025年8月にイタリアで身柄を拘束され、11月にドイツに身柄を引き渡された。2026年7月1日に正式起訴され、裁判は10月末にハンブルクで開廷予定。ジュラヴリョフは2024年と2025年9月30日にポーランドで欧州逮捕状に基づき身柄を拘束されたが、2025年10月にワルシャワの裁判所がドイツへの身柄引き渡しを拒否し、解放を命じた。ロシアは爆破の責任についてウクライナ、米国、英国を非難したが、ウクライナ、ポーランド、米国、英国はいずれも関与を否定。Wall Street Journalは消息筋を引用し、サボタージュはウクライナ軍関係者と財界の有力者によって計画され、一般に入手可能な海底図を用いて帆船から実行されたと報じた。