EU、ウクライナ向け欧州平和基金66億ユーロの放出条件で大筋合意―ハンガリーの拒否権解除
EU加盟国は9月25日、ウクライナ支援のために欧州平和基金(EPF)から66億ユーロを放出する条件で大筋合意した。同基金からのウクライナ向け軍事支援は2023年春からハンガリーの拒否権で止まっていたが、オルバン首相に代わったマジャル新首相が選挙公約として拒否権を解消した。最終的な正式決定は28日のEU理事会で国防相が下す見通し。
要点
- EU加盟国が欧州平和基金(EPF)から66億ユーロをウクライナ支援に放出する条件で大筋合意(9月25日発表)
- EU外務・安全保障上級代表カヤ・カラスがXで合意を表明
- 配分内訳:9億ユーロをEUMAMウクライナへ、10億ユーロを新たな共同軍事装備調達へ、47億ユーロを加盟国が既に提供した軍事支援への補償へ
- EPFの対ウクライナ軍事支援は2023年春以来、ハンガリーの拒否権で凍結されていた
- オルバン氏に代わり選挙で勝利したマジャル新首相が公約として拒否権を解消
- 正式決定は28日月曜日のEU理事会国防相会合で採択が必要
- 合意を受けて、一部のEU加盟国(スウェーデン、ドイツなど)は補償分の再投入を表明
なぜ重要か
2年以上にわたるハンガリーによる事実上の拒否権で止まっていた大型の軍事・防衛支援パッケージの扉を開く合意であり、ハンガリーの政権交代がEU内の対ウクライナ支援をめぐる対立を解消したことを示す。資金はウクライナの国防予算の逼迫とドローン調達に直接関連し、ロシアのハイブリッド圧力に直面する中でもEUがウクライナ支援の規模拡大を続ける意思を示す政治的シグナルでもある。
何が起きたか
9月25日、EU外務・安全保障上級代表のカヤ・カラスがXへの投稿で、EU加盟国が欧州平和基金(EPF)から66億ユーロをウクライナ支援に放出する条件で大筋合意したと発表した。配分は、軍事支援ミッションEUMAMウクライナに9億ユーロ、新たな共同軍事装備調達に10億ユーロ、加盟国がこれまで提供した軍事支援の費用補償に47億ユーロ。EPFの対ウクライナ支出は2023年春以来、ハンガリーのオルバン政権下の拒否権で止まっていたが、選挙でオルバン氏を破ったマジャル新首相が拒否権を解消した。合意は政治的な了解にすぎず、資金の配分メカニズムを正式化するにはEU理事会が法的行為を採択する必要があり、28日の国防相理事会で最終決定が予定されている。
ウクライナメディアの見方
ウクライナ語メディアは一斉に「凍結解除」「合意」「防衛へ配分」と表現し、カラスの「ロシアへの悪い知らせ」というフレーミングを前面に出す。ハンガリーの政権交代が合意を可能にした経緯を強調し、ウクライナの国防予算不足やドローン調達問題にこの資金を結びつけて報道する。
海外メディアの見方
英語圏の主要報道機関(香港のSouth China Morning Post)は同じ決定を伝えるが、見出しではユーロ建ての「66億ユーロ」を「75億ドル」と米ドル換算で表記しており、ウクライナ側および他のEU報道が用いる金額表示と異なる。
報道の食い違い
南華早報の見出しだけが「75億ドル」と米ドル換算で金額を表示。他のすべての出典は欧州平和基金からの66億ユーロと記載している。また交渉過程では、ドイツが66億ユーロ全額をウクライナへ直接振り分けるよう提案したのに対し、ポーランドは基金を通じて提供した約4億5千万ユーロの支援の全額補償を求め、これに反対した。
背景
欧州平和基金(EPF)は2021年3月に創設された170億ユーロ規模のEUオフバジェット基金で、軍事・防衛支援をパートナー国に提供する。2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻後、攻撃を受ける国に殺傷能力ある武器を供与するために初めて本格的に活用された。EPFからの支払いには全加盟国の全会一致が必要。対ウクライナ軍事支援は2023年春以降、ハンガリーのオルバン政権下の拒否権でブロックされていたが、オルバン氏を破って当選したマジャル新首相が拒否権の撤回を公約にしていた。なお9月18日には欧州委員会がドローンとミサイル購入向けに別途33億ユーロをウクライナに配分している。ウクライナの国防予算は約270億ドルの不足を抱えるとされ、ドローン調達に影響する可能性があると報じられている。