ノルウェー首相、ゼレンスキー氏搭乗機にドローンが「ほぼ命中」と発言 モルドバ発便の遅延巡り
ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相は9日、NRKのインタビューで、8日にモルドバを発ちオスロへ向け離陸準備中であったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の専用機が、ロシア製ドローンに「ほぼ命中」したと述べた。一方、ノルウェー政府高官やモルドバ当局、ウクライナ大統領府は後にこれを否定または過剰だとし、実際には離陸が約16時20分頃のモルドバ領空進入に伴う閉鎖で遅延しただけだと主張。ゼレンスキー氏はハーラル5世の葬儀に出席するため来日し、オスロではストーレ首相、ストルテンベルグ財務相、エイデ外相と防空強化や欧州の対弾道防衛構想「FREYJA」について協議した。
要点
- 8日午後16時20分頃、シャヘド型と推定されるドローンがウクライナ側からモルドバ領空に侵入し、モルドバ空域が部分閉鎖された
- モルドバ政府報道官は、3便の outbound flight と4便の inbound flight に遅延が生じたことを確認、その中にゼレンスキー氏搭乗機も含まれた
- ノルウェーのストーレ首相は9日のNRKインタビューで「ほぼ命中した」「彼が置かれている現実だ」と述べた
- ノルウェー首相府のバッヌジャ・ラシア国家書記は遅延は事実だが機体との距離は不明と釈明
- モルドバ国家保安省はドローンが同国北部のルィシュカニ地区のヒマワリ畑に落下し、4件の火災を引き起こしたが死傷者はないと発表
- モルドバ領空に侵入したドローンはNATO加盟国のルーマニア領空にも飛来し、ルーマニアはスペイン空軍F-18戦闘機を2機スクランブル発進させヤシ空港を一時閉鎖
- ゼレンスキー氏は8日夜にオスロ入りし、9日のハーラル5世葬儀に参列、ストーレ首相と防空強化や欧州対弾道防衛構想FREYJAについて協議した
なぜ重要か
この事案は、進行中の戦争の最中に一国の大統領が外国へ移動する際の安全という根本的な問題を提起する。ロシア製ドローンがモルドバやNATO加盟国ルーマニアの領空へ侵入したことで、戦争の影響が周辺国へ波及している実態が改めて示された。また、ノルウェー政府高官とウクライナ大統領府の間で大統領専用機への脅威の度合いに関する見解が分かれたことは、国家元首の安全に関する情報が政治的にどう語られるかという問題を浮き彫りにしている。
何が起きたか
8日午後16時20分頃、ウクライナの方向からドローンがモルドバ領空に侵入した。モルドバ国防省は同機を予備的にシャヘド型と推定。中央部の空域が民用機の安全確保のため部分閉鎖され、3便の outbound flight と4便の inbound flight 、ゼレンスキー氏のオスロ行き便を含む計7便が遅延した。ドローンは一時ルーマニア領空にも入った後、ルーマニアがヤシ空港を一時停止し、スペイン空軍のF-18を2機スクランブル発進させた末にモルドバへ戻り、ルィシュカニ地区のヒマワリ畑に墜落、4件の火災を引き起こしたが死傷者はなかった。ゼレンスキー氏搭乗機はドローンがレーダー上から消えた17:15を待ち、17:30に離陸した。ストーレ首相は9日、機体が「ほぼ命中しかけた」と発表。一方、ノルウェー首相府国家書記は機体との距離は不明とし、ウクライナ大統領府はストーレ氏の発言を「誇張」と表現した。9日、ゼレンスキー氏はハーラル5世の葬儀に参列し、オスロでストーレ首相らと防空やFREYJA構想について協議した。
海外メディアの見方
国際メディアの多くは、ストーレ氏のNRKインタビューを軸に、ロシアのドローンが「ほぼ命中しかけた」という象徴的な側面を強調した。彼は戦争中の大統領の現実を表現する発言として注目され、ハーラル5世の葬儀という場面との対比によって物語性が際立った形となった。一方で、ノルウェー当局による「距離は不明」という釈明も併記されたが、多くはウクライナの反論よりもストーレ氏の当初の言葉がリードとして据えられた。複数記事はロイターや戦研究所(ISW)を引用し、シャヘド型ドローンがモルドバ・ルーマニア両国の領空を通過した経路を背景に据えた。
報道の食い違い
出典によって複数の食い違いが見られる。第一に、ノルウェーのストーレ首相は専用機がドローンに「ほぼ命中しかけた」と述べたが、ノルウェー首相府国家書記バッヌジャ・ラシア氏やウクライナのオレン大統領府筋は機体との距離は不明とし、危険視点を「誇張」と表現した。第二に、ウクライナ大統領府筋は専用機とドローンが同時に空中にいなかったと証言しているのに対し、ストーレ氏の発言は離陸時にドローンが接近していたという印象を与える。第三に、ドローンが1機だったか2機だったかについても出典ごとに記載が異なる。第四に、遅延が発生した日付について大半の出典は8日としているが、1件は7日としているが事実上異論がある。
背景
ノルウェー国王ハーラル5世は8月28日に89歳で逝去し、9日にオスロで葬儀が営まれた。ゼレンスキー氏はその葬儀参列のためにモルドバからノルウェーへ向かった。また8日夜から9日にかけては別のロシア製ドローンがウクライナ・モルドバ国境のインフラを攻撃し、モルドバのマイア・サンドゥ大統領は国境検問所への攻撃で2名が死亡したことを非難した。