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ロシア、制裁迂回としてモルディブの空港を中継拠点に 米WSJが報じる

米ウォール・ストリート・ジャーナルの調査により、ロシアがモルの首都マレの国際空港を制裁回避のための中継地点として利用し、米国・欧州・中国からの制限品やデュアルユース品をアエロフロートの定期便でモスクワへ輸送していることが明らかになった。現地の仲介業者とロシア系物流会社が通関を処理し、新たな航空運送状で荷受人を取り繕う仕組みで、マイクロチップや光学機器などのデュアルユース品がサンディスク対象のS7航空などにも届いている。モルディブ政府と空港運営会社は取材に対しコメントを拒否している。

要点

  • ロシアはモルのマレ国際空港を制裁回避と制限品輸入のための中継地点として使用
  • 毎朝アエロフロートの定期便がマレ空港に到着し、米国・欧州・中国からの貨物をモスクワへ再搭載
  • 現地仲介業者がロシア系物流会社と協力し通関を処理、新規航空運送状で荷受人を別のロシア輸入業者と記載可能
  • マイクロチップ(ミサイル誘導用)、光学機器、航空宇宙用リベット・ボルトなどデュアルユース品が通過
  • 荷受人にはS7航空やその整備子会社など制裁対象企業が含まれる
  • モルディブ公式通関統計は対ロ輸出をほぼゼロと記録するが、ロシア側データは2022年に6.3億ドル超、2024年に約1.6億ドルを記録
  • 2024年にモルディブ空港会社(MACL)は過去最高益を記録し、取扱い貨物量も増加
  • 米国・欧州はモルディブへの圧力を強めているとされる

なぜ重要か

この調査は、西側の対ロ制裁が実際の物流網でどこまで穴を持っているかを具体的に示すものだ。デュアルユース品がS7航空のような制裁対象企業を含むロシア側へ流入していれば、ウクライルの戦場に直接影響する部品・技術も含まれている可能性がある。モルディブ空港会社の巨額利益は、制裁回避が商業的にも定着しつつあることを示唆し、欧米側の対モルディブ圧力の強化をどう実効化するかという問題を突きつける。さらに、モルディブ側の通関統計とロシア側データの著しい乖離は、制裁回避の規模把握自体が難しいことを示している。

何が起きたか

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は航空運送状、貨物マニフェスト、物流会社間の電子メール、西側当局者へのインタビューを基に、ロシアがモルのマレ国際空港を制裁迂回の中継拠点として利用していると報じた。仕組みはこうだ。米国・欧州・中国からマレへ送られた貨物は、ロシア系物流会社と現地の仲介業者によって通関処理される。トランジット貨物は物理的に検査されないことが多く、新規の航空運送状が作成され、元の売主を伏せて別のロシア側の輸入業者名が記載される。荷物はアエロフロートの毎朝の定期便に積み込まれ、モスクワへ運ばれる。

通過する品目にはデュアルユース品が多く含まれ、マイクロチップ(ミサイル誘導用とされる)、光学機器(敵部隊や衛星の追跡用)、高強度の航空宇宙用リベット・ボルト(民間機、戦闘機、長距離ミサイルに使用可能)などがある。一部の貨物はロシア最大の国内航空会社S7航空やその整備子会社など制裁対象企業へ届けられている。2024年5月には独クラーマー・マイニングがキルギス企業へ約9,000ユーロ相当の機器を販売し、貨物独からマレへ送られた上でアエロフロート便に積み替えられ、新規航空運送状ではクラスノヤルスクのロシア側輸入業者が荷受人として記載されていた。

貿易データにも大きな矛盾がある。モルディブ公式通関統計は2022〜2025年の対ロ輸出をほぼゼロ(マグロ約2,300ドル、リーフレット約25ドルなど)と記録する一方、米調査会社インポート・ジニアスのロシア側貿易データでは、モルディブからのロシア向け輸入が2021年の700万ドル未満から2022年に6.3億ドル超へ急増し、2024年は約1.6億ドルだった。ただしインポート・ジニアスのウィリアム・ジョージ研究者は、ロシア当局が2024年以降に一部の貿易データを検閲し、2025年初めには完全に閲覧不能にしたため、2024年の数値も実際を過小評価している可能性が高いと指摘している。

2024年、モルディブ空港会社(MACL)は過去最高益を記録し、同国で最も収益の高い国営企業となった。貨物取り扱い料や商業サービス料に加え、燃料にマージンを乗せて転売することで利益を得ている。2024年7月には1日あたり126トンという1日貨物トランジット量の過去最高を記録した。西側当局者は、モルディブが制裁迂回の中継点となっていることで米国と欧州から圧力を強められていると述べるが、モルディブ政府とMACLは疑惑についてコメントを拒否している。

報道の食い違い

モルディブ公式の通関統計は2022〜2025年について対ロ輸出をほぼゼロと記録しているが、米調査会社インポート・ジニアスがまとめたロシア側の貿易データでは、モルディブからの輸入が2021年の700万ドル未満から2022年に6.3億ドル超へ急増し、2024年は約1.6億ドルに達している。モルの通関能力の限界とトランジット貨物が物理的に検査されない実態が、この統計上の乖離の一因となっている。

背景

モルディブは観光客の受け入れで知られ、ロシア人観光客は中国人に次ぐ2番目の規模を占める。ロシア向け貿易は公式にはほぼ存在しないとされてきたが、2022年以降ロシア側データではモルディブ発の輸入が急増している。ロシア当局は2024年以降に一部の貿易データの検閲を開始し、2025年初めには完全にアクセスを遮断したとされ、輸入規模の正確な把握は一段と困難になっている。