エストニア国防相、スキャンダルを受けて辞任表明
エストニアのハンノ・ペフクル国防相が2日、EU資金によるウクライナ向け砲弾調達事業の失敗を受けて辞任を表明した。事業では約7000万ユーロが前払いされたが、納品は大きく遅延し、品質問題も指摘されている。エストニア検察当局は調達プロセスを巡り刑事捜査を開始し、国防省側は納入業者を提訴した。
要点
- ハンノ・ペフクル国防相が9月3日に辞任を表明。司会はETV『Aktuaalne kaamera』でのインタビュー、ERRが報じた
- ペフクル氏は2022年から同職を務め、1991年の独立回復以来最も在任期間の長い国防相だった
- ウクライナ向け155mm砲弾調達で約7000万ユーロが前払いされたが、経験のないインド企業への支払いで納品遅延と品質不良が生じた
- 調達資金は欧州平和ファシリティ(European Peace Facility)を含むEU資金。事業全体はチェコ主導のウクライナ向け砲弾イニシアチブの一環
- エストニア検察当局は調達プロセスを巡り刑事捜査を開始し、国防関連当局は納入業者を提訴
- ペフクル氏はRKKから契約書を提出されていたが自分は読まなかったと認めた。『国防相は契約を交渉せず、原則的決定を下す立場だ』と説明
- エストニア首相クリステン・ミハル氏は3日朝に内閣会合を開催し、会計検査院長からの報告を受ける予定。野党は早期解散を求めている
なぜ重要か
ウクライナへの軍事的支援で最も声高な支持国のひとつであるエストニアで、同国のウクライナ向け砲弾調達事業の失敗を受けて国防相が辞任した。事業にはEU資金が投入され、ウクライナの155mm砲弾不足を補う多角的取り組みの一環として実施された。経験のないインド企業への約7000万ユーロの前払い、納品の長期遅延、品質問題が明らかになり、検察による刑事捜査と納入業者への提訴に発展した。辞任は、8月に与党連合が議会過半数を失ったエストニア政界の不安定化をさらに深めるものだ。
何が起きたか
9月3日、エストニアのハンノ・ペフクル国防相がETVのニュース番組『Aktuaalne kaamera』のインタビューで辞任を表明した。背景には、ウクライナ向けにEU資金で進められた155mm砲弾調達事業の失敗がある。エストニア国防投資センター(RKIK)は2024年8月以降、インド企業Datasel S.R.L.(イタリア登記)との契約で弾薬を確保しようとし、約7000万ユーロを前払いしたものの、契約は6〜8か月以内の納品を想定していたものの最終的に弾薬は届かず、品質も基準を満たさなかった。資金は欧州平和ファシリティなどEUの枠組みから支出された。
ペフクル氏は国家会計検査院の国防軍およびRKIKに関する報告を受けて政治的責任を取る姿勢を示した一方、契約書自体はRKIKから提出されていたものの自分は読まなかったと認めた。契約の詳細については元宰相クスティ・サルム、現宰相カイモ・クースクにも情報が共有されていたとされる。
エストニア検察当局は調達プロセスを巡り刑事捜査を開始し、国防関連当局は納入業者を提訴。すでに欧州仲裁・調停センター(ストラスブール)で仲裁手続きが進められているほか、欧州委員会と連携し、デンマークへの資金移管を含む回収策が検討されている。辞任表明に先立つ同日朝、ペフクル氏は国会特別委員会の公聴会で『通常の契約紛争』との認識を示していた。
ウクライナメディアの見方
ウクライナ側報道は、本件を一貫して調達スキャンダルとして枠組み、エストニア当局がウクライナ向け砲弾調達で約7000万ユーロを前払いした点を強調している。記事群は事業のEU資金による性格、対象が155mm砲弾であった点、検察による刑事捜査の存在、そして調達がチェコのイニシアチブ枠組みで実施された事実を前面に出し、ウクライナへの影響を重視する報道姿勢が一貫して作用している。また、国家会計検査院報告と国会特別委員会の公聴会がペフクル氏の辞任に直結した経緯を詳しく伝えている。
背景
ペフクル氏は2022年から国防相を務め、1991年の独立回復以来最も在任期間の長い国防相とされていた。事業自体はチェコ主導のウクライナ向け砲弾イニシアチブの一環として実施されたが、チェコのバビシュ首相就任後、参加国数は2025年12月の18か国から9か国へと半減している。8月にはエストニア与党連合(改革党と『Estonia 200』)から議員2名が離脱し、議会(リーギコグ)の過半数を失った。野党は早期議会選挙を求めている。