チェコ情報機関トップ、ロシアによるNATO支援国への危険度の高い作戦の可能性を警告
チェコ情報保安局(BIS)のミハル・コウデルカ長官は12日、議会での安全保障会議で、ウクライナ支援を続けるNATO諸国に対し、ロシアが今後数か月のうちに一段と危険な作戦に出る可能性があると警告した。ウクライナ向け支援施設・武器庫への妨害工作や、極限のケースとして隣接NATO加盟国への限定的な軍事作戦も挙げた。一方、NATO欧州連合軍最高司令官は攻撃を受けた場合の3層対応策を公表し、別の高官は9月のロシア軍損失が死傷者5万人超、死者のみ最大2万8千人に上り得るとの推計を示した。
要点
- 12日、チェコBISのコウデルカ長官は議会安全保障会議で、ウクライナ支援NATO諸国に対するロシアの危険な作戦の可能性を今後数か月以内に警告した
- 列挙されたシナリオは、ウクライナ支援関連施設への妨害工作、ドローンやミサイルによる武器庫攻撃、そして隣接同盟国への限定的な軍事作戦
- コウデルカ氏はロシアが「escalate to de-escalate(エスカレーションによる脱エスカレーション)」戦術を採用していると指摘
- コウデルカ氏はロシア軍が現在ウクライナに戦力を集中させており、チェコへの差し迫った具体的脅威情報はないと述べた
- NATO欧州連合軍最高司令官アレクサス・グリンケヴィチ氏は、攻撃への対応3要素(進軍阻止・敵軍弱体化・戦闘継続能力の破壊)を提示
- あるNATO高官は、9月のロシア軍の死傷者数が5万人超、死者のみ最大2万8千人に上り得ると推計
- プーチン大統領は10月、ロシアはいかなる欧州諸国への侵攻も計画していないと公に述べた
なぜ重要か
NATO加盟国の情報機関トップが公の場で、ウクライナ支援国への妨害工作から限定的な軍事作戦に至るエスカレーションリスクを警告したことで、ハイブリッド攻撃を超えた軍事的可能性が議論の射程に入った。同時にNATO欧州連合軍最高司令官が攻撃時の対応3層と敵陣後方への打撃構想を公に示したことで、同盟の抑止姿勢と準備状況がより具体的に可視化された。
何が起きたか
10月12日、チェコBISのミハル・コウデルカ長官は国際的な議会レベルの安全保障会議に登壇、ロシアが今後数か月以内にウクライナ支援NATO諸国に対して危険な作戦に切り替える可能性を警告した。同長官は、支援関連施設への妨害工作、ウクライナ向け武器庫へのドローン・ミサイル攻撃、そして極限のケースとして隣接NATO加盟国への限定的な軍事作戦をシナリオとして列挙した。コウデルカ氏はロシアが「escalate to de-escalate」戦術を取っているように見えると述べ、その目的はNATOの結束を弱めることにあると指摘した。一方で同氏は、ロシア軍が現在ウクライナに戦力を集中させており、チェコへの直接的な脅威情報はないと強調した。
別途、5日の時点でNATO欧州連合軍最高司令官アレクサス・グリンケヴィチ氏がワルシャワで「Victory Theory」と呼ぶ戦略を発表し、進軍阻止・敵軍弱体化・継続戦闘能力の破壊の3要素で応じるとし、必要に応じて前線後方の補給・指揮施設への打撃も辞さない姿勢を示した。またNATO高官は、9月のロシア軍の死傷者数が5万人超、死者のみ最大2万8千人に上り得ると推計し、ウクライナのドローン・地雷・砲兵の射程内に部隊が送られていると説明した。
発言を受け、チェコのアンドレイ・バビシュ首相はコウデルカ氏に対し「Audi, vide, tace(聞け、観よ、黙れ)」というBISのモットーを読み直すよう求めた。元外務大臣ヤン・リパフスキー氏はSNSで、首相は「頭を砂に埋める」のではなくロシアの影響から自国を守るべきだと批判した。
報道の食い違い
コウデルカ氏はロシアをNATO支援国への危険なエスカレーション準備段階にあると位置づけたのに対し、モスクワは10月、欧州諸国への攻撃を計画していないと公に述べ、妨害工作やハイブリッド作戦への関与を一貫して否定している。またコウデルカ氏は隣接NATO加盟国への限定的な軍事作戦をシナリオとして挙げつつ、それが差し迫った脅威ではないこと、チェコへの具体的脅威情報はないと明確に述べており、エスカレーション全体の警戒姿勢と、チェコ個別の即時脅威否定との間には緊張がある。
背景
2014年にチェコのヴルベティツェ弾薬庫で起きた爆発では2人が死亡し、2024年にチェコ警察はロシア軍情報部GRUの将校らの関与が証明されたとの見解を示した。10月1日にはフィンランドのバルト海海域における臨界インフラ保護のため、NATO Baltic Sentry作戦に米国海兵隊約40名を編入すると米国防総省が発表した。10月1日のワルダイ討論クラブでの演説でプーチン大統領はNATOとの軍事的衝突における核兵器使用の可能性に言及したが、その後ロシアはいかなる欧州諸国も攻撃しないと述べた。