ゼレンキー大統領、元報道秘書を制裁対象に――「ロシアの宣伝活動」への関与を理由に
ウクライナのウォロディミル・ゼレンキー大統領は9月13日、国家安全保障国防会議(RNBO)の決定を施行する大統領令第901/2026号に署名し、自身の元報道秘書ユリア・メンデル氏に対する個人制裁を導入した。メンデル氏は5月に米ポッドキャスターのタッカー・カールソン氏へ出演し、ロシア寄りの主張を展開していた人物で、今回の制裁対象者10人のうち唯一のウクライナ市民とされる。ゼレンキー氏は同日に、関連する別の人材やロシアの影の艦隊に対しても制裁を導入した。
要点
- ゼレンキー氏が9月13日に大統領令第901/2026号でRNBOによる元報道秘書ユリア・メンデル氏への個人制裁を施行
- メンデル氏は制裁対象者10人のうち唯一のウクライナ市民――残る9人はロシア市民のプロパガンダ関係者
- 制裁は資産凍結、取引禁止、資本流出防止、入国禁止を科し、SNS(Instagram・X・Facebook)のウクライナ国内からの閲覧も制限
- 一部の制裁は10年、その他は期限なし。提案はウクライナ保安庁(SBU)が実施
- 同日に大統領令第899/2026号でロステック関連29企業・29市民へ、第900/2026号で影の艦隊タンカー20隻へ制裁
- メンデル氏は5月のカールソン氏への出演で、ゼレンキー氏が2022年にドンバスをロシアに明け渡そうとしていたと主張し、麻薬使用や資金洗浄も示唆
- ゼレンキー氏はメンデル氏とカールソン氏を「狂った人々」と評し、大統領府はメンデル氏の主張を「真面目に取り合うものではない」と否定
なぜ重要か
今回の制裁は、大統領府の元幹部が外国メディアでロシア寄りの主張を拡散したことに対する、ウクライナ政府の明確な立場表明である。制裁パッケージの対象にはメンデル氏だけでなく、ロシアの国防産業複合体や影の艦隊も含まれており、プロパガンダ対策と制裁政策の統合的な一環として位置づけられる。同時に、ウクライナ指導部に対する一定の批判がロシアの情報戦の一部と分類され得るという政府の枠組みを強調する動きでもある。
何が起きたか
2026年9月13日、ゼレンキー大統領はRNBOの決定に基づき、大統領令第901/2026号によりメンデル氏を含む10人(メンデル氏とロシア市民9人)に対する個人制裁を施行した。制裁内容には資産凍結、取引禁止、資本流出防止、入国禁止が含まれ、メンデル氏に対してはInstagram・X・Facebookのウクライナ国内からの閲覧制限が特に追加された。制裁は10年間の措置と無期限の措置で構成され、提案はSBUが行った。同日にゼレンキー氏は大統領令第899/2026号(ロシアのロステック関連29企業と29市民)および第900/2026号(リベリア、パラオ、シエラレオネ、バルバドス、マーシャル諸島籍の影の艦隊タンカー20隻)にも署名した。メンデル氏の制裁の背景には、5月のカールソン氏への出演でゼレンキー氏がドンバスをロシアに明け渡す用意があったと主張し、麻薬使用や資金洗浄を示唆し、ゼレンキー氏を「平和の最大の障害」の一人と呼んだことがある。大統領府の communications adviser ドミトロ・リュトヴィン氏は記者団に対し、メンデル氏は交渉や意思決定には関与しておらず、その主張は「真面目に取り合うものではない」と述べた。
ウクライナメディアの見方
ウクライナメディアは制裁パッケージを、メンデル氏個人の件だけに矮小化せず、ロシアのプロパガンダ、防衛産業複合体、影の艦隊までを含む統一的な措置として報じている。メンデル氏はより広範なロシア偽情報ネットワークの一部として位置づけられ、大統領府や偽情報対策センター、リュトヴィン氏の反応が繰り返し紹介される。さらに、メンデル氏が制裁導入の数日後に予定していた独AfD主催の欧州議会(ストラスブール)イベント出演を、制裁のタイミングを理解する文脈として挙げる報道もある。
海外メディアの見方
入手可能な国際的な視点は、アゼルバイジャンの英語通信社(APA)の短い報道に限られる。そこでは「ゼレンキー大統領が元報道秘書を制裁」という事実関係のみが示されており、制裁パッケージ全体、カールソン氏への出演内容、プロパガンダとしての位置づけなどには踏み込んでいない。今回のメタデータには他の国際言語メディアの枠組み比較に十分な材料がない。
報道の食い違い
メンデル氏が大統領報道秘書としての職務を離れた時期について、NV社は2021年4月30日頃とする情報に触れつつ、別情報源では同年7月としていると伝え、hromadske社は2021年7月9日まで務めたとしている。
背景
ユリア・メンデル氏は2019年6月3日から2021年7月9日までゼレンキー大統領の報道秘書を務め、それ以前は複数のウクライナテレビ局や米ニューヨーク・タイムズ、米Politicoと協働した経験を持つ。2026年5月、米保守系ポッドキャスターのタッカー・カールソン氏への出演で、ゼレンキー氏が2022年のドンバス引き渡しに同意する用意があったと主張し、資金洗浄や麻薬使用を示唆、元大統領府長官アンドリー・イェルマーク氏を「権力者のうち最も危険な人物」と呼んだ。ウクライナの偽情報対策センターは、これらの主張がロシアのプロパガンダの中核的論点と整合すると指摘した。